【ノイに聞く海外展】日本と欧州のアプローチ比較

ノイ 代表取締役 髙橋 真一 氏
Q
日本と比較して欧州の展示ブースデザインにはどのような特徴があるのでしょうか
A

欧州のブースデザインは、日本といくつかの点で異なる特性があります。日本の展示会では製品が展示台に配置され、後ろには説明パネルがありますが、欧州ではよりスッキリとしたデザインが好まれます。この違いは、日本の展示会が主に日本人来場者向けであるため、言葉の障壁が少ないという背景があります。一方で、海外の展示会は多国籍な来場者が多く、コミュニケーションが主な目的であり、そのために商談や対話がしやすい空間が設けられます。インターナショナルな展示会では、その場でのコミュニケーションが非常に重要な要素であり、商談スペースの存在が一層重要になります。落ち着いた雰囲気を作るために暖色系の照明を使用することもあります。

具体的なデザイン要素としては、天井吊りや照明の工夫があります。これによって、空間が広く感じられると同時に、製品がより際立つようになります。私は「脱パネル展示」や「脱アームライト」を意識したブースを提案することが多いです。

材料選びにも独自の傾向があります。日本ではベニヤと経師が主流ですが、海外ではペイント、化粧板、またはファブリックがよく使用されます。ファブリックは大きなグラフィックを一枚で表現できる利点があり、施工時間の短縮やフレームの再利用性が高いと評価されています。以前に比べて排出されるゴミの量は減っているようにも感じます。また昔に比べて施工現場のチリやホコリが減ったような気もしますが、それももしかしたらファブリックの台頭が理由の一つかもしれません。

Q
サステナビリティに関する展示ブースのトレンドを教えてください
A

最近、ドイツで印象的なブースを見かけました。ダンボールを主材料として使用したブースでした。驚いたことに、このダンボール製のブースはドイツの厳格な消防法にも適合しています。電気配線もダンボールの間にしっかりと配置されていたので、一見すると燃えやすそうに見えますが、非常に工夫が凝らされており感心しました。このダンボール製のブースは、再利用性よりも廃材が全てが燃えることが重要なポイントだと感じました。欧州では脱プラスチックの向きが強く、例えば来場者のバッジホルダーや会場内のゴミ箱も紙製であることが多いです。

そして、サステナビリティに関しては、ブース自体がエコフレンドリーであると謳うよりも、「我々の製品はサステナブルな方法で製造されています」というメッセージがブースで強調される傾向にあります。

Q
海外でのブース運営におけるコミュニケーション戦略は?
A

海外展示会においては、日本とは違ったコミュニケーションのスタイルが求められます。日本でよく見られる名刺交換やカタログの配布といった方法はあまり前提とされません。むしろ、展示内容や製品の特徴についての直接的な質問から話が始まることが多いです。そのため、出展者は商談に直結するような情報を即座に提供できる準備が必要です。特に、発注書の準備や納期、金額についても速やかに答えられるようにしておくことが望ましいです。

また、海外の展示会には高いプロフェッショナリズムが求められます。主催者、出展者、来場者、それぞれがプロとして高いレベルのサービスや品質を提供し合っています。これは出展者にとっても高いハードルがある場合があり、時には良い展示位置を確保するために主催者にプレゼンテーションを行うケースもあります。

出展成功の評価方法についても、名刺の交換枚数やカタログの配布数よりも、商談の成立数や質を重視するべきです。そのため出展者には、出展の成否を判断する際には、1日1件でも良いので、商談や打ち合わせができたかどうかを基準にしましょうとお伝えしています。

Q
プロフェッショナリズムについて詳しく教えてください
A

まず展示会が単なる情報交換の場ではなく、本格的な商談が行われる場であり、来場者は高額な入場料を支払い参加します。また主催者は、展示ブースが質の高いものであることを望んでおり、そのために施工期間も長く設定されています。出展者にも一定の要求があります。たとえば、20〜30㎡のブースを出展する場合、無料で利用できる入場チケットは5枚程度と限られており、それ以上必要な場合は追加料金が発生します。

来場者、主催者、そして出展者がそれぞれお金と時間を投資することで、出展ブースのクオリティ、ひいては展示会全体のクオリティが向上します。この良い循環がプロフェッショナリズムを高め、更に質の高い展示会を生み出していると言えるでしょう。

Q
出展成功のためにブースデザインで考慮すべきポイントは何でしょう
A

海外出展で成功を収めるには、ブースデザインに特別な注意が必要です。特に高級商材を展示する場合、その品質にふさわしい高級なブース設計が求められます。なぜなら、製品自体がいくら優れていても、そのプレゼンテーションが貧弱であれば、バイヤーは「この企業は信頼できるのか?」と疑念を抱いてしまいます。例えば、職人が丹精込めて作った1万円の壺でも、それが百円ショップで展示されていたら価値が低く見えてしまうのと同じです。

出展する企業自体の本気度も、ブースデザインを通じて評価されます。高品質な製品を展示する以上、その品質を際立たせ、信頼を勝ち取るための努力がブースデザインにも求められます。

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