【グローバルメディアに聞く海外展】日本企業が知るべき米国の展示事情と効果的なアプローチ

本記事は2023年10月15日発行の『見本市展示会通信』908号で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

グローバルメディア 代表取締役 利根川 正則 氏
Q
米国と日本の展示会事情にはどのような違いがありますか
A

当社は2003年から米国にも拠点を置いており、北米最大級のアパレル展示会「MAGIC」の国際レップなど、数々の展示会で日本企業の出展支援を行ってきました。私の持論として、トレードショーはビジネスの入り口であり、同時に出口でもあると感じています。

米国は展示大国で、その展示会場のスペースは日本の約20倍にも及びます。また、米国の国土面積は日本の25倍。日本においては、いわゆる「どぶ板営業」のように、しらみつぶしに訪問することも可能かもしれませんが、米国の広大な土地では現実的ではありません。また、米国はボイスメール文化が根付いているため、電話での即時のコミュニケーションは難しいのが実情です。このような背景から、ビジネスにおけるコミュニケーションの場として、展示会の役割が一層重要になっています。さらに、米国のビジネスカルチャーは合理性を重視する傾向があります。

米国の展示会は広大な規模を誇りますが、新人バイヤーは必ずすべてのブースを巡るのが特徴として挙げられます。しかし、ここで考えなくてはならない問題点があります。それは日本企業の出展リピート率は、他の国と比較して非常に低く、こういった出展者は米国のバイヤーから敬遠される傾向があるということです。日本には「石の上にも3年」という諺がありますが、日本から米国の展示会に3年間出展するには莫大な費用がかかります。生半可な覚悟でできることではありません。だからこそ、米国のバイヤーは出展者の継続性を重視し、非常に厳しい目で評価するのです。1年目の出展は「初めまして」、2年目は「久しぶり」というステップを踏み、3年目になってようやく「商品を見せて」という関心をバイヤーから得ることができるのです。

もう一点、日本との違いを強調するならば、特に米国は「トレードショー」です。売れるかどうかを試す場ではありません。展示会の成功の鍵は、段取り8割、本番2割であると考えています。つまり、展示会の当日までの準備と戦略が、最終的な成功を大きく左右します。米国市場への参入を検討する際には、地域の商習慣の理解はもちろん、市場への適合性を入念にリサーチしてからの出展が不可欠です。

Q
米国で出展を成功させるためのコツを具体的に教えてください
A

米国での展示会出展を成功させるための最も重要な要素は、やはり主催者との緊密な関係構築にあります。私たちが日本企業の出展をサポートした際、主催者に「メイドインジャパン」の独自性と熱意を強く伝えることで、日本の出展者を前面に押し出してもらえるようになったり、主催者の協力でバイヤーへの告知もサポートしてもらえた経験もあります。

また実は、関係を深めるべきは主催者やバイヤーだけでなく、他の出展者ともです。多くの出展者はディストリビューターと共に参加しており、彼らはその出展者の製品だけでなく、新しい商材も探しています。同業他社であっても、出展者同士でのつながりを深めることで新しいチャンスを見つけることができるのです。私たちは、サポートする企業に対しても、他のブースを訪れることをアドバイスしています。特に会期前日にブース準備を早めに終わらせて、他の出展者に声をかけることがコツです。

さらに、米国市場に適応させるための製品のローカライズや微調整も不可欠です。時折、ターゲット層や市場のニーズに応じて、製品の色やデザインなどの要素を変更することも必要となります。日本での成功が、必ずしも米国市場での成功を意味するわけではありませんから。


 

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