[座談会]お城EXPO、10年の変化と展望は

全国のお城ファンが集う「お城EXPO」が、今年も12月20日・21日の2日間、パシフィコ横浜で開催される。観光と文化、そして学術の面から〝お城の魅力〟を発信してきたこの祭典は、今回で10回目の開催を迎える。そこで主催者4社に集まっていただき、10年の歩みを振り返りながら、これからのお城文化の広がりについて語ってもらった。

荒川 正樹 さん

荒川 正樹 さん
日本城郭協会 代表常務理事。
お城好き。
日本城郭協会は企画監修のほか、セミナーやプログラムの出演者のブッキングを担当する。

馬鳥 誠 さん

馬鳥 誠 さん
横浜国際平和会議場(パシフィコ横浜) 常務取締役。
お城好き。
パシフィコ横浜は会場としての開催サポートのほか、出展セールス、全体のレイアウト、装飾の手配調整などを担当する。

望月 可奈 さん

望月 可奈 さん
東北新社 プロモーションプロデュース事業部 プロデューサー/城びと編集部。旅行好き。
東北新社はワークショップなどのコンテンツ決め、当日の運営ほか、チケッティングやオリジナルグッズの制作、広報などを担当する。

山野井 健五 さん

山野井 健五 さん
ムラヤマ カルチャー・ソリューション事業本部 2部 文化事業セクション。キュレーター。歴史好き。
ムラヤマは主催者企画のほか、各出展者のブース制作の対応、事務局業務などを担当する。

初開催・2016年の様子


山野井 2019年の「天下の行方―大坂の陣その後―」ですね。凸版印刷(現TOPPANAN)さんがデジタル想定復元した「大坂冬の陣図屏風」と、豊臣秀吉の天下統一から大坂の陣の後までの歴史の流れがわかる古文書や絵図などをコレクターの方から借用して一緒に展示しました。私のなかで、最新のデジタル技術による復元資料と秀吉や徳川家康、石田三成の古文書などの実物資料を同列に展示することで、人が面白いと感じる本質とは何か、というコンテンツの方向性から展示を考えるという視点が生まれました。
 去年の企画展示「城郭からみる日本遺産」も忘れ難いです。史跡や文化財を組み合わせてストーリーとして提示する日本遺産の特質を、来場者(以下、来城者)が自らの興味関心にしたがって城郭や戦国時代の歴史や文化財を組み合わせたストーリーを作って楽しむことを提案する企画をプレゼンしたところ採用いただき、企画から原稿作成、施工と上流から下流まで一貫して携わりました。


望月 お城情報サイト「城びと」を立ち上げた2017年のことをよく覚えています。出展ブースで宣伝したのですが、時期的にサイト名しか出せなかったにもかかわらず、多くの人に温かい声をかけてもらいました。お城というコンテンツは敷居が高いのかも、という不安をよそに、良いコンテンツを届けたいという私たちの思いを感じ取ってくれた。なんて素敵なカルチャーだろうと思いました。


荒川 初開催時は集客面など、責任者として大きなプレッシャーを抱えていましたが、初日の朝、予想を超える長蛇の列ができ、その光景に感動したことを覚えています。そこから来城者は年々増え、コロナ禍も中断することなく開催し、収益も出るまでに成長しました。4社それぞれの思いが「お城」というテーマでうまく合致し、新しい価値を生み出せている。開催の度に大きな喜びを感じます。


馬鳥 ひとつは出展営業です。例えば日本三大名城の一つ・名古屋城は、初回には出展が実現しませんでしたが、現地で関係者との信頼関係を粘り強く築いた結果、第2回には愛知県として参加が決まりました。その後も出展が続き、今では最も大きなブースとなっています。
 愛知県に限らず、お城EXPOの営業活動は当初こそ苦労しましたが、当時生まれた全国の観光関係者や武将隊とのご縁は、今も続いています。現在ではMICEや観光にもプラスの影響をもたらしています。
 もう一つは、第4回から始めたコンサートです。隣接する横浜みなとみらいホールとは、それまで連携らしい連携がありませんでした。しかし、お城EXPOをきっかけにプロデュースというかたちで参画いただき、コンサートが実現しました。私の大好きな戦国時代の大河ドラマのテーマ曲を演奏するもので、選曲やプログラム解説は私が担当しています。そのコンサートが今年、京都国際会館でスピンオフ公演を行うことになりました。全国へと展開が広がっていることをとても感慨深く感じています。


荒川 はじめは「城コンベンション」という、講演会と少しの展示で構成された小規模なイベントを想定していたんですよ。その後、さまざまな関係者のアイデアが加わり、もっとイベント性を高める方針に転換しました。


馬鳥 お城好きが集まって意見交換をするコンベンション中心で考えていましたよね。
 EXPOに方向性をシフトしてからは、何を出展してもらうかを検討しました。私はお城に行ったらパンプレットをもらってファイリングするので、そこから着想を得て、各地のお城や資料を一度に集めて配布できる場にしたいと思いました。お城好きって、旅行の目的は基本的にお城ですから、行きたくなるための情報を得られる場所になればと考えたのです。


望月 変わっていますね。初回は一人で参加する方が多い印象でしたが、近年はファミリー層も増えて、一層にぎやかなイベントになったと感じます。


馬鳥 アンケートでは男女比がおよそ6対4ですが、会場を見ていると、子ども連れのお母さんも目立ちます。山野井さんには子どものファンがいるんですよね。


山野井 コンテンツを補うために、現場で解説しているうちに覚えられたみたいで……。歴史好きな子はたしかに増えたと感じます。
 来城者の平均年齢が40代で、実際にその世代が多いですよね。私は前職で学芸員をやっていたのですが、知るかぎり文化施設って40代の来館者は少ない傾向があるので、特徴的だなと思っています。


馬鳥 お城好きの有名人も意外といることもわかってきました。お忍びで来る方もいますし、ゲストで参加いただいた春風亭昇太さんや田村淳さんなどはお城好きを公言されています。お城文化の認知やお城ファンの拡大にも大きく貢献してもらっています。


望月 建物のある城が好きな人、土の城が好きな人、石垣だけを見たい人、写真を撮るのが好きな人、各地のおもてなし武将隊が好きな人など、色々な楽しみ方が広がっている印象です。


山野井 私は歴史的な視点から城を見るのが好きなのですが、建築的構造や領土、模型や地形の再現など、何に魅力を感じるのか、人によって方向性がはっきり表れるのは面白いと思います。ジャンルをまたぐことも少なく、深堀していく人が多い印象です。


荒川 研究者はその傾向が顕著ですね。日本城郭協会は約70年前、「城郭学」の確立を目指して設立されましたが、現在もまだ統一的な形には至っていません。お城というテーマが考古学・文献研究・建築など、多様な専門分野から研究されているうえ、それぞれの分野が独立して研究されていることもその一因です。


馬鳥 現地でお城を見て体感することに価値を感じている私は、ライトに広く楽しむのが自分のスタイルにあっていますが、お城には多様な見方、楽しみ方がある。それこそが城郭文化の発展につながっていくのでしょう。
 好みや研究分野ごとで分かれてしまうからこそ「垣根を越えて意見を交わす場としてのお城EXPO」になれば、より発展していきそうですね。


馬鳥 おかげさまで出展営業もスムーズになりました。今回も、申込期限ぎりぎりまで、新規の問い合わせがありました。


荒川 当初は日本100名城を出展ターゲットに絞っていましたが、最近は日本100名城以外の城からも出たいという声も増えました。


山野井 日本100名城は都道府県につき、少なくとも1城が登録されているので、城=その地域を象徴するものという認識を支えているし、出展地域の分布もバランスが年々良くなっています。それがイベント全体の魅力につながり、自治体にとっても出展する価値のある場として認識されているのだと感じます。


馬鳥 例えば三重県の「津城」は、初回からずっと出展してもらっています。実際にお城EXPO後に現地に行く人も多いと聞きますから、このイベントの効果を評価いただいているのでしょう。


馬鳥 出展者で言えばファミリー層に合わせて、武将隊やご当地キャラとの記念撮影ができるブースも多くなりました。また3~4回目以降は〝御城印〟の販売がぐっと増えましたよね。


荒川 城カードなどの関連グッズも人気になりました。100名城スタンプラリーの影響も大きいと思いますが、訪れた証を集める文化が、〝お城巡り〟を確立させ、結果としてイベントの盛り上がりにつながったと思います。
 お城好きは、どこの城に行ったかを記録・証明することに喜びを感じる人が多いですから。自慢したいんです。


馬鳥 ちなみに私は国内のお城だと500くらい行っています。


荒川 私は650です。勝ちました。

\ チケットプレゼントのご案内 /
「お城EXPO2025」のチケットを5組10名様へプレゼントいたします。
応募フォームから必要事項をご入力ください。
応募締切は12月5日(金)まで。
当選の発表は発送をもって代えさせていただきます。
ぜひこの機会にご応募ください。


望月 目玉企画は「お城EXPO戦術論の成果をもとに激論をかわします。「長篠の合戦450年」をテーマにリレーセッションや、今年1年を振り返る「2025年城の10大ニュース」の講演も注目です。展示は騎馬体験や伊達家の甲冑の着付け体験ができる企画展のほか、ちょっとユニークな展示も企画しています。今年は「10周年」を記念して、小学生以下が無料で入城できるので、大人から子供まで楽しめる企画を準備しています。


望月 この10年間でお城好きへの認知は広がったのではないかと思っています。次は歴史や遺跡に興味がある、新しい層にもお城EXPOを知ってもらいたいですね。やっぱり、現地を訪れることが継続的な保全の力になると思うので、「お城EXPO」がそのきっかけになっていけたらうれしいです。


荒川 これまでお城EXPOは観光を中心に展開し、10年を経て定着しました。今後は、知的な趣味としての城めぐり、というのを確立させたいと思います。研究や調査といった学術的な側面もイベント内で取り上げ、知識を深める場としての要素を強化する。日本城郭協会としても、その方向性が望ましいと感じています。


山野井 エンタメとしての歴史コンテンツは、瞬発的に利益を生むタイプではなく、大河ドラマや信長の野望シリーズのように続けるうちに徐々にファンを拡大させていく、という話を聞いたことがあります。
 お城文化の発展にも時間がかかるのであれば、若いファンを取り込む必要があるでしょう。例えばヒップホップ系のミュージシャンなどは、自分たちのルーツとして歴史に関心を持っています。今後はエンタメとカルチャーの接点を意識しながら、多様な角度から歴史や文化をとらえた企画を用意して、関心を広げていきたいです。


馬鳥 みなさんが語ったファンの裾野を広げること、知識をより深めていくことに加えて、私が強化したいところは国際化です。今、日本の城には多くの外国人観光客が訪れています。一方で、お城EXPOは案内や展示が日本語中心で、グローバル対応できているとは言えない状況です。多言語対応を進め、海外からの来城者が参加しやすい環境を整える必要があると思っています。
 来城者だけでなく、海外からの出展も今後、拡大が期待されます。今回、はじめて韓国から出展があります。日本やアジアの城郭文化は深いつながりがあり、ヨーロッパの城とも異なる魅力を持ちます。将来的には海外の城や団体との連携・交流を進めることで、お城文化の国際的な広がりを目指したいですね。

馬鳥 10回目、間違いなく面白いので是非来てください。来ればあなたもお城ファンに!

荒川 絶対楽しいから!! ぜひお城EXPOに来てください。

山野井 自分で知らなかった楽しみ方を知れる場なので来てください。

望月 今年はお祭り気分で楽しめるようにしたので、気軽に遊びに来てほしいです。

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