[連載]展示会デザイナーはどうあるべきか。#4|SUPER PENGUIN・竹村 尚久

本記事は、展示会業界専門紙「見本市展示会通信」に掲載された連載をもとに、WEB掲載用に再構成したものです。

デザイナーの「モチベーション」

これまで、展示会の仕事は「出展者を成功させること」が重要であり、そのプロジェクトの中心となるべきデザイナーにはさまざまな側面から出展者をサポートする「成功させる力」が必要、という視点について述べた。

しかし、実際には「現実的ではない」、「受け入れられない」など、否定的に考えてしまう方も多いのではないだろうか。中には、それ以前に「そもそも、今の仕事に疑問がある」、「会社・上司に対して不満がある」などネガティブな思い・悩みを持っている方もいるかもしれない。そこで、今回は仕事に対する「意義の作り方」について、話してみよう。

〇 仕事を「楽しい」と感じるか?

さて、まずはデザイナーの方、特に20代、30代の若手の方々に聞いてみたい。今の仕事、楽しいだろうか?
「楽しい」という方がいればそれに越したことはない。本稿を参考程度に読んでいただきたい。一方で、「楽しく感じない」という方は、本稿を是非読んでもらいたい。

デザイナーに限らず社会人の若手の方にお会いすると、時々「モチベーションをどう上げればいいでしょうか」という質問を受けることがある。これに対して私は「会社などの環境が2割、しかし8割は自分自身の問題だよ」と答えるようにしている。モチベーションを上げるのは結局「自分自身の気持ちの設定次第」だ。ならば、具体的にどうやってモチベーションを上げるのか。私はそれにはいくつかの「発想の転換」が必要だと考えている。このことについて、いくつかお話をしていこう。

〇 「完璧」でない会社、そして上司

私自身もそうだったが、20代・30代の頃はつい会社や上司に対して批判的になってしまいがちだ。「どうして、こうなのか」「なぜ、そうしないのか」といったように。私も企業に勤めていた時代、このように会社や上司を批判していた。しかし、今になって思うことは、会社も、そして上司も、さらには社長も、根本的に「完璧ではない」ということだ。

人はつい自分以外の人間・組織等に「完璧」を求めてしまう。「会社とはこうあるべきだ」「上司とはこうあるべきだ」という自身が勝手に作り上げた理想像とついつい比べてしまうのである。そして、その「自分が考える理想像」に反すると、批判と文句が出てしまう。

しかし、世の中に完璧な人・組織などはない。足らないところ、できていないところ、未完成なところが多々ある。だからこそ、人を雇い、制度をつくってその未熟な部分を補完しようとする。上司にしてもそうだ。完璧な人はいない。だから、それを補完するようにスタッフが配置され、チームが作られる。大切なことは、今自分がいる組織の中がどんな状況で、その中で自分はどんな役割を期待されているのか、組織のどんな未熟な点を補完するべく自分がいるのか、自分が「どう補完してあげれば」組織がうまく回るのか。自身の役割をまずは考えてみることだ。

この「完璧ではない組織の中で、自分に何ができるのか」を考える、という視点に自身を切り替えることができれば、自分が何をすればよいのかが見えてくる。与えられた仕事をただこなすだけでなく、今の組織に対して自分ができることが見えてくる。そうすると、徐々に自分を取り巻く環境が変わって見えてくることだろう。

〇 「自分から」という視点

次の視点は自身のスタンスの問題だ。

「日本人論」に関する書籍を読むと、日本人の民族的性格について「集団主義」という言葉を目にする。農耕文化のムラ社会が発祥となる日本では、「個人の規範」よりも「集団の論理」が優先されてきた、というものである。このような特徴をもつ日本人は、自身がどう感じるかの前に、組織のルールに従うことを優先するよう習慣づいてしまっている。このような日本的組織の中では、自身の考えや意志を強く言わず、「指示されるまで待つ」という状況が起こりがちになる。例えば、指示された部署に異動し、指示された物件の担当になる、というように。これの何がいけないのか、と思う方もいるかもしれない。

しかし、私は「自分が望む状況は自分自身で作り上げるべき」と考えている。「こんな物件を担当したい」。このような思いがあるのであれば、日頃から上司に率先して話しておき、「上司同士の会話」にも耳を澄ませておく。もし、面白そうな物件の話が出ているようであれば、誰かに指名される前に「その物件、私にやらせてください」と自ら立候補すればいい。また、異動したい部署があるのであれば、上司や会社に対して、その旨を明確に伝え、自分がその部署に向いている理由、異動して役に立てることを徹底的にプレゼンすればいい。このように「待つ」のではなく、「自分から動く」ことが大事なのだ。この「自分から」という視点に切り替えることができれば、自身を取り巻く環境は、大きく変化して見えることだろう。

この「周囲はそもそも完璧ではない」という視点と「自分から動く」という視点が自分の中に生まれると、日頃感じていた不満がなくなってくることに気が付くだろう。是非一度、自分自身を見直してみてほしい。
 

「やりがい」の設定方法

前回、展示会デザイナーの仕事は職種の特徴的に「息切れしやすい業務」であることも説明した。毎日のようにさまざまな物件が発生し、会社に籠り、現場に出ることもなく、大きな変化のない同じような仕事を繰り返すとどうしても自分のやっていることに疑問を持ってきてしまう人が出てしまう。そのためにも、「意識の変換」はとても重要なことで、それと同時に「なんのために」今の仕事をしているのか、そして「何を目指して」「何を目的にして」作業を続けるのか、このことを明確にしておくことが極めて重要なこととなる。

〇 自分ならではの「やりがい」を見つける

日頃、業務を主体的に進めるためには、何らかの「目標」の設定が必要だと感じている。ここでいう「目標」とは、業務達成を数値化する、という類のものではない。自身の中での「やりがいの設定」、「意義の設定」というところだろうか。組織としての目標も大事だが、それ以前に自身のモチベーションを高く保つためにも、この「意義の設定」が極めて重要となる。

では、どんな「意義」を自身に設定すればよいのだろうか。それは、大層なものでなくてもいい。「意義」ではなく「やりがい」と言い換えてもいいだろう。例えば毎回新しいデザインを考案する、でもいいし、出展者の喜ぶ顔が見たい、というものでも十分だ。

自分ならではの「やりがい」を見つけるためには、自分が「どんな状態になったら嬉しいのか」をよくよく知ることが大事だ。自分で考えたデザインが実現したときなのか、質の高い企画書ができたときなのか、お客さんが喜んで感謝のメールを送ってきてくれたときなのか。それらの「日々のちょっとした嬉しさ」を見つけるとそこに自身の「やりがい」の種が潜んでいることが多い。「嬉しいこと」「楽しいこと」が「やりがいの原点」だ。今の仕事のどこにそれが潜んでいるのか。または、どうなればそう感じるようになるのか。このことを深く考えてみることをお勧めしたい。

私の場合、展示会最終日の撤去時に出展者が大喜びしている姿をみること、その企業の売上が伸びて、会社として成長する姿をみることが最大の「やりがい」となっている。しかし、実はこの「やりがい」に気が付いたのは、独立してしばらく経った頃だった。もともと学生時代から建築設計を学んでいたこともあり、それまでは「自身が考えた空間を実現すること」が自身のやりがいなのだと思っていた。

しかし、独立した当初は決して楽しくないわけではないが「何かが足らない」と思い続けていた。それが、展示会のデザインを行うようになり、来場者の方々が喜んでいる姿を見るようになって初めて「自分が求めているものはこれだったのだ」と気が付いた。これが年齢にして40歳になってからのことだったので、ずいぶんと遠回りしたものだ。

〇 「やりがい」を通常業務に落とし込む

さて、自身にとっての「やりがい」。これが見つかったら、次はそれを自分の日頃の業務に深く落とし込むことが重要だ。「楽しい」と思っても、それが年に1回しか実現しないようでは「やりがい」と呼ぶことはなかなか難しいだろう。日常の業務の中で頻繁に実感できることが大事だ。そのためにも「自身のやりがい」を日々の仕事の中に自然な形で取り込まれている状態をつくり出す必要がある。

では、どのようにしてそんな状態をつくり出せばいいのだろうか。そのためにまずは自分の中で、どんな業務内容・体制になったらいいのかを考えてみてほしい。その際に自分の中で「こうあるべきだ」という固定観念がないかを振り返ることもお勧めだ。

例えば私の場合、「自分は建築設計を勉強してきたので、メイン業務は建築・インテリアの設計なのだ」という固定観念だった。皆さんの中にも、実は苦手だと思っていた営業業務こそが天職だった、といった、全く別の担当が実は向いている、ということもあるかもしれない。

このように、自分の「やりがい」の形が見えてくれば、次にやるべきことは、その考えを「周囲に話す」ことだ。例えば「自分は○○することが好きだ」「こんな業務が向いているように感じる。とても楽しい」と言ったように。立ち話をしているとき、食事のとき、打合せに出かけたときなど、さまざまな場面で口に出し、上司や会社にその気持ちを共有しておくといい。きっと今後の人事上の参考にしてくれるはずだ。自身の気持ちは自身で伝えようとしなければ伝わらない。上司は決して完璧な人間ではない。言ってくれなければ想像するしかないし、場合によっては勝手に決めつけてしまうこともありえるだろう。自分の考えていることを「自分から」伝えることは、とても重要なことなのだ。ここで、「意識の変換」が意味を成してくる。

次回は、より具体的にどのように自分の得意分野をつくりあげるか。このことについて考えてみよう。

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