
サービスの内容は提供会社によって異なるが、省力化ニーズに応える手段として注目されている。
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[インタビュー]出展準備に求められる“コスパとタイパ”。オンラインサービス「パケテン」の取り組み
展示会出展は企業にとって販路拡大や認知獲得のチャンスだが、準備には多くの手間がかかる。特に初めて出展する企業にとっては装飾やレイアウト、設営・撤去といった実務が負担になりやすい。こうした課題に応えるべく、博展が2018年に立ち上げたのがパッケージ型ブース装飾サービス「パケテン」だ。オンラインで装飾手配まで完結できる点が特徴で、現在は多業種・多規模の出展者に活用されるサービスへと成長。初出展支援だけでなく、出展マーケティングを下支えする“インフラ”としての存在感も増している。今回は、エキシビジョンマーケティング事業部・パケテン事業推進室の天野奈津子氏と毛利友美氏に話を聞いた。

誰でも出展できる仕組み
パケテンは“早く・簡単に・質よく”を掲げ、見積もりからレイアウト作成までをオンラインで完結できるサービスだ。担当者が本業の傍らで出展業務を兼任するケースも多い中、時間と労力を大幅に削減できることや導入フローのシンプルさが大きな利点となっている。
あらかじめ設計されたパッケージの中から用途に合ったプランを選ぶだけで、装飾の手配が完了する。同社では、展示会主催者が用意するパッケージブースとオーダーメイドのフル施工ブースとの“中間”の選択肢として位置付けている。
展示会ブース装飾というと、施工会社との綿密なやりとりや調整がつきものという印象が強い。しかしパケテンでは営業担当がつかなくても、必要な手続きを自分で一通り行える。FAQやチャットボットに加え、必要に応じて連携するコールセンターも備え、疑問や不安にすぐ対応できるよう工夫されている。
特徴的なのは、問い合わせ対応の一部を外部オペレーターが担っている点だ。展示会の専門家ではないからこそ、出展初心者の視点に近い言葉で説明できる場面も多い。より専門的な相談については社内スタッフにスムーズに引き継がれ、出展者にとって過不足のない対応が実現している。

“手ぶら出展”という選択肢
パケテンは、単なる装飾サービスにとどまらず、近年では会期中の現場業務にまで対応領域を広げている。受付やチラシ設置の補助、撤去作業の代行といったオプションが追加され、出展に関わる多くの業務を任せられる“手ぶら出展”が現実のものとなってきた。
中でもニーズが高まっているのが撤収作業の代行だ。展示会終了後の撤去は、出張先でのタイトな移動スケジュールと重なりがちで、対応に苦慮する出展者も多い。「新幹線の時間が迫っていて撤収に立ち会えない」といった悩みに対し、梱包・発送まで一括で対応する代行プランが好評を得ている。
現在は関西圏を中心に稼働が拡大しているという。現地での人的対応を含めた支援は、装飾サービスを超えた“展示会運営の外注先”としての機能を果たす。「必要なことはすべて任せられる」という安心感が出展者の負担を大きく軽減している。
誰でも、何度でも出展できるように
一度利用した出展者が、次回以降も自然にパケテンを選びたくなる導線づくりにも注目したい。例えば、サービスを通じて集めた出展予定情報に基づき、事前にリマインドメールを送る仕組みやマイページ上で過去の見積もりやレイアウト履歴を簡単に確認できる機能がある。「どの展示会でいくらかかったか」「前回はどんな仕様だったか」といった記録をすぐに確認できることで、再出展の心理的ハードルも下がる。サービス導入当初と比べて、1社あたりの平均利用回数は1.2回から1.5回へと増加。中には「次回もお願いします」と展示会終了直後に連絡が入るケースも少なくない。
当初はスタートアップやベンチャーなど、小規模かつITリテラシーの高い企業を中心に利用が広がった。しかし現在では、食品や製薬といった非IT系の大手メーカーにも波及し、出展規模も1〜2小間から3〜4小間へと拡大傾向にある。営業担当が全国を飛び回り、限られた販促費を自ら管理するような現場では、パケテンのスピード感が重宝されている。

人の対応が生む信頼
パケテンはオンラインで完結するサービスでありながら「人」の対応力にも高い評価が寄せられている。出展後のアンケートには「〇〇さんが親切だった」といったスタッフ個人への感謝の言葉が見られることもある。通常、やりとりは「パケテン窓口」名義で行われるが、それでも出展者の記憶には担当スタッフの名前が残っていることも多く、対応の丁寧さが伺える。特に信頼を生んでいるのが、会期直前の細やかなフォローだという。「念のための確認」や「不安を軽減する一言」といった、わずかなやりとりの積み重ねが出展者の安心感につながっている。
また現場での対応力も信頼づくりに一役買っている。設営や撤去を担当するスタッフの丁寧な作業ぶりに対し「次回もお願いしたい」という声が寄せられるという。こうした現場対応は、協力会社との連携に加え、博展としての50年以上にわたる展示会業務実績に支えられている。
パケテンが提供するのは、単なる合理化やコストダウンではなく、出展をあたりまえにするための「安心の仕組み」そのものであるといえよう。