【スポーツホスピタリティ】とは?|キーワードで読むイベント業界

【スポーツホスピタリティ】
スポーツイベントにおいて、観戦に加えて提供される特別なサービスや体験のこと。具体的には、専用ラウンジの利用や飲食の提供、記念品、専用の入退場ルートなど。主に来場者の満足度を高めるための取り組みとして、主催者や施設側によって企画・提供される。

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[インタビュー]常設設備がなくても上位体験をつくる。TSP太陽がプロバレーボールリーグで探るスポーツホスピタリティの実践

2024年10月、日本バレーボールの新しいトップリーグ「大同生命SV.LEAGUE」(SVリーグ)が開幕した。世界最高峰のバレーボールリーグを目指すSVリーグで、TSP太陽はゴールドパートナーとして、観戦体験の付加価値を収益化するスポーツホスピタリティに挑む。有明アリーナでのクルーズツアー付きチケット企画や企業向けスイート活用など、同社が積み重ねてきた取り組みから、現場で生かせるポイントを整理したい。プロデュース事業部の髙橋氏岩崎氏に話を聞いた。

(L→R)髙橋 綾乃 氏 と 岩崎 絵梨子 氏/TSP太陽 プロデュース事業部 ビジネスプロデュース部 プロデュース2課

プロデュース × ホスピタリティの挑戦と壁

TSP太陽のプロデュース事業部・ビジネスプロデュース部は、従来業務に加えスポーツやウェルネス領域の新規開拓を手掛ける。昨年のSVリーグ発足時からゴールドパートナー契約を締結し、リーグ戦でのスポンサー表示物の設営・オペレーションなどを担いつつ、クラブとの接点を起点にホスピタリティ領域に取り組む。

現状、日本の会場には基盤となるホスピタリティ設備が整っていないという課題が見える。欧米ではVIP席やスイートが社交の場として一般化しているものの、日本では競技会場にラウンジやスイートがないケースも多く、導入には初期投資が重い。SVリーグでは今後クラブライセンス基準の交付によって会場でのホスピタリティ施策が加速する見込みだが、現状は「設備不足によってやりたくてもできない」事情がある。だからこそ、外部施設や仮設を活用して体験を再設計する発想が求められる。

  

設備がなくても上位体験を生むヒント

2025年5月に有明アリーナで開催された男子ファイナルでは、観戦チケットと東京湾クルーズを組み合わせた特別プランを導入した。内容は、前方の良席確保(スタンド席前から1〜2列目)、観戦後のチャーター船での軽食・お茶、サイン入りグッズの特典など。販売は旅行会社と連携した専用サイトで行い、2名×7組の14名限定チケットが約1時間で完売。価格帯は通常席のおよそ倍とし、関心の高さを確かめた。

また法人向けには、LaLa arena TOKYO-BAYで開催された男子ファイナルでVIPルームを企画販売し、バルコニー席を交流の場とする取り組みを実施。家族同伴の来場も見られ、元バレーボール選手の大林素子氏のトークショーと交流時間を設けて高評価を得た。

ほかにも、駅から遠い会場なら往復を専用バス化し、車内で限定映像を見せる方法もある。交流・移動・演出まで含めて体験価値を積み上げることで、クラブのブランド価値向上にも波及する。

  

スポーツホスピタリティ成功のカギ

TSP太陽はフードイベントでのホスピタリティ設計や屋外仮設の知見も豊富で、会場外に仮設空間を設けることで体験価値を高められる強みがある。ただし、会場によっては規約や給排水、保健所申請、バリアフリー配慮など、運用上のハードルが高い場合もある。新設アリーナではラウンジや個室席が基本仕様として備わりつつあるが、備品の調達など、現場調整の負荷は依然大きい。

同社は2025-26シーズンに向けて、希望するクラブと直接やりとりし、クラブの意向や事情に寄り添ったホスピタリティ施策の提案に取り組んでいる。スポーツホスピタリティを実践する上では「良席・動線・特典の組み合わせ」と「移動を含む全行程の体験化」が不可欠である。そして、これらプレミアム枠の企画は一般チケット販売前に固める必要がある。販売前からの逆算設計こそが成功の条件といえる。

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