【ピコ・インターナショナルに聞く海外展】大型LEDと二階建てブースが生む商談の質

本記事は2023年10月15日発行の『見本市展示会通信』908号で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

ピコ・インターナショナル アカウント・マネージャー 永里 勝彦 氏
Q
中東の展示会ブースの特徴について教えてください
A

UAE・アブダビの展示会で仕事をしたとき、かつての日本を感じさせるほどの力強い雰囲気を感じ、軽くショックというか、「ここまでやるんだ!!」と驚きました。嫌らしい派手さはなく、それでいて作り込まれているのです。

大型LEDビジョンの多用や二階建てブースなど、分かりやすいインパクトがある一方で、われわれと同じ業界にいる人であれば見逃せない、実はすごい造作もいたるところで見かけます。例えば3D曲線を用いた木工造作のデザインは本当に難しく、製作に時間もかかります。ですが中東では、そのような凝ったデザインのブースがたくさん並んでいます。

またブースの約半数は二階建てです。会場のスペースに対して出展者数が多いため、階層を設けることで出展面積を補っているのです。さらに天吊り装飾も一般的で、日本より安価にできるとはいえ、それでも少なくない費用をかけて実施しています。一階建てのブースの場合は天吊りでボリュームを出していることもあります。

中東の展示会ブースは縦の空間を有効に活用するブースが多いと言えるでしょう。二階建てに加えて、天井からサインを吊るすと高さが12mにも及ぶこともあります。そのため、見通しの悪い会場内においてどのように来場者に認知してもらうかがブースデザインのポイントです。

ブース内の空間は文字情報量が少なく、デザインの力を最大限活かしていて、上質で居心地の良さを追求した空間であることが多いです。例えば、誰でも入れるブースの一階部分とは異なり、二階部分は個室の商談室やVIP向けラウンジなど、特別な空間を作っていることが多く、それがビジネスの深耕につながっていると思います。例えば、モーターショーにおいて、高級車メーカーのブースは車両展示も少ないし、説明パネルも全くないことが多いです。しかし上質な作りになっているから、商談している人がVIPであることが一目瞭然で、その空間に招かれて商談していること自体がステータスにもなります。

Q
あえて日本の展示会ブースの改善点を挙げるならどのような点ですか
A

日本では限られた予算の中でなるべく情報を入れようとして、造作物も運営もプレゼンテーションも作りこみ過ぎになりがちで、結果としてインパクトに欠けてしまう空間が多いです。海外の展示会に行ってみると、良くも悪くも「日本人って、つくづく真面目なんだなぁ」と再認識します。

海外の大型LEDビジョンの使い方としてはセミナーやプレゼンテーションで使うよりも、空間演出の一つとして組み込まれていて、雑然さを感じません。空間演出が上手なのだと感心します。

Q
海外で出展する上でのポイントを教えてください
A

海外の展示会は来場者もまた、商談するために来場するので、質のいい商談のための居心地の良い空間を提供できるかが重要なポイントになると思っています。出展する以上、より高い営業効果を求めるのは理解できるのですが、あまりPRに真面目になりすぎず、空間デザインも商談を左右する要素のひとつとして捉えてみると良いのではないでしょうか。

また居心地のいい商談スペースを作るためには、その国のビジネス文化に精通しているパートナー選びも重要です。例えばUAEでは、王族が大きな権利を持っているので、展示会に王族が来場することもあります。とあるクライアントは、コネクションを作るために、本来の事業とはほぼ無関係の展示会に出展していました。内装はおもてなし重視で、自社事業のことはアピールせず、日本文化を中心に紹介するというもの。どのような空間づくりが最適なのかは国によって異なるため、最終的な利益につなげるためにも事前の知識や文化への理解が不可欠です。

私達には世界各地に心強い仲間がいます。出展者をサポートする上で、現地の工場の制作チームとのコミュニケーションが一番重要だと考えているので、機会があるたびに工場を訪ねFace to Faceでコミュニケーションを取るように心がけています。現地の制作チームと仲良くなることで現場サイドの視点から、いろいろな相談に乗ってもらえ、現地の特性を理解したり、施工面での課題のクリアが容易になります。

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