【レポート】イベント安全対策シンポジウム ポートメッセなごや

 ポートメッセなごやMICEコンソーシアムは、2月18日にポートメッセなごや・コンベンションホールで「安全対策シンポジウム」を開催した。このシンポジウムはイベントにおける防災・安全対策と、サステナブルな展示会・イベント作りを切り口に、同組織が企画した自主事業だ。
 冒頭、愛屋博司館長が挨拶。昨年に能登半島地震の発生や、南海トラフ地震の臨時情報の発表があったことを取り上げ、「展示会の会期中に大型の地震が発生した場合、どのように安全に多くの参加者を避難させるかが、イベントの主催者や会場にとって大きな課題である。もう一つのテーマであるサステナブルについては、今後のイベントに必須な要素と考え取り入れた。シンポジウムでイベント業界の皆さんと課題を共有し、役立つ情報を提供したい」と開催の目的について述べた。

 第一部の初めは「イベント関係者全員で取り組む安全対策」について、日本展示会協会・安全対策委員会委員長の梶原靖志氏が講演した。日本展示会協会の安全対策委員会と、2024年に策定した「展示会搬入出に関する安全ガイドライン」について紹介。
 ガイドラインの特に重要なポイントとして「入館者全員のヘルメット着用」と「夏季の展示会の熱中症管理(搬入出時の空調の稼働)」を強調して示した。
 梶原氏は「作業者のヘルメット着用をさらに徹底するとともに、主催者と出展者のヘルメットの着用も推進していく。単に呼びかけるだけでなく、実際の作業の場でヘルメットが購入できる環境の確保についても取り組んでいる」と話す。なおインテックス大阪では2026年に搬出入時のヘルメット着用義務化を検討している。

 気象庁・名古屋地方気象台の仲岡茂氏は「自然災害への事前準備と対策について」をテーマに、気象庁から発表される防災気象情報の見方や入手方法、地震情報の活用について説明した。
 発表される防災気象情報内の警戒レベルとは、住人がとるべき行動と居住者に行動を促す情報を関連付けて5段階で表したもの。発表されるタイミングや状況を参加者に伝えるとともに、仲岡氏は「避難行動は警戒レベル4までに」と呼びかけた。
 また南海トラフ地震の臨時情報については、「発表されて一週間なにごとも起きなくても、発生の可能性が高い状態が続いている。日ごろから注意して生活してほしい」と改めて注意を促した。

 次に「展示会開催中の震災体験から得た教訓と対策」と題し、日経イベント・プロの安藤英賢氏が展示会運営中に被災した経験と、当時の対応方法について紹介した。
 2011年3月の東日本大震災発生時、安藤氏は展示会「街づくり・流通ルネサンス(現日経メッセ)」の主催者として東京ビッグサイトにいた。
 安藤氏は「最初に大きく揺れたとき展示ホール内におり、ブースの構造物が落ちてきそうな勢いだった。次の瞬間、来場者が一斉に出口へと逃げ出し始めたため、走らないよう大きな声を出してなんとか誘導した」と当時を振り返る。
 その後、安藤氏は開催中止を決断。本部に連絡する必要があったが、一般電話回線のパンクが続いており、連絡が不可能となっていた。この経験から強力な通信回線の必要性を強く感じ、以降の運営ではエリジウム衛星電話を必ず用意しているという。

 第2部ではサステナブルなイベントの開催をテーマに、博展の白川陽一氏とセレスポの越川延明氏が講演。まず越川氏がサステナビリティとビジネスの現状と、先日イベント関連6団体が発行した「イベント・MICE関係者のための使いやすいサステナビリティガイドブック」の内容と使い方を解説した。
 またサステナビリティに実際には取り組んでいないのにもかかわらず、取り組んでいるように見せかける「ウォッシュ」が流行している問題についても触れ、越川氏は「イベント自体をウォッシュツールにさせないことが大切。具体的に何に取り組んでいるのか正しく伝えるべき」と話す。できた活動とできなかった活動を明確に報告書に記載すること、イベントの目的とサステナビリティの活動で目指すものが矛盾しないことを、ウォッシュを回避する方法のひとつとして挙げた。
 さらに具体的なケーススタディとして白川氏が、博展の手掛けるイベント「サステナブル・ブランド国際会議」を取り上げ、イベントの取り組みについて説明。催事で発生した廃材の処理方法を可視化したことにより、リサイクルの質が向上した事例を紹介した。

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