来場者目線で提案深める|イベントのしごと

(掲載=「見本市展示会通信」2025/4/15号)

東京造形美術 営業推進部 課長代理 石川 裕樹 氏

――業界に入ったきっかけは

実家が工務店を営んでいて、祖父は看板屋をしていました。幼い頃からものづくりに触れる機会が多く、自然と興味を持っていました。大学時代はテレビドラマの美術制作のアルバイトも経験しました。就職活動の際にイベント関連の企業を探し、東京造形美術に入社しました。

そういった影響もあってか、街を歩いていても自然と建築物や動きのある構造に目がいきます。ブース設計に活かせそうと感じることもありますし、新しいアイデアが浮かぶこともあります。

――印象に残っている仕事は

2017年と2019年の東京モーターショーです。自動車メーカーのブースを担当し、海外チームとも連携しながら進めました。それまでは基本的に国内営業を担当しており、通常は海外案件には関わらない立場でしたが、思いがけず担当することになりました。

海外の出展者から見ると、施工の進め方は日本とは大きく異なります。海外では1社で施工すべてを担当するのに対し、日本は電気工事や経師貼り、サイン施工などを分業しているため、それぞれの工程を調整しながら進める必要があります。進行の考え方が異なるため、スケジュール管理が非常に複雑で、現場の調整力が求められた経験でした。

――最初の頃と比べて、仕事の取り組み方に変化はありますか

入社当初は「おしゃれなブースを作りたい」「クライアントに評価されたい」という気持ちが強かったです。しかし経験を重ねるうちに、クライアントにとって本当に意味のある提案とは何だろうと考えるようになりました。

来場者は情報収集や比較検討のために展示会に来ていて、あまり話しかけられたくない人も多いんです。洋服を買いに行ったときに店員さんから積極的に声をかけられると、ちょっと引いてしまうのと似ています。だったら展示会のブースでも同じことが起きるんじゃないか。では、どうすれば来場者にストレスなく情報が届くのか。動線の設計やスタッフの立ち位置など、細かい部分まで意識するようになりました。

――具体的にはどのような点でしょうか

出展者の営業スタイルに合わせたブース設計を心がけています。例えば、営業が積極的な企業の場合、あえて営業スタッフが前面に立ちすぎないよう配置を工夫することがあります。来場者が話しかけられすぎることに抵抗を感じるケースがあるため、接客の温度感をコントロールすることで、来場者の心理的な負担を減らすようにしています。

――仕事の進め方で意識していることは何でしょうか

「丁寧に対応しすぎない」ことを意識していますね。もちろん誠実な対応は欠かせませんが、すべての要望を持ち帰ってしまうと話が停滞することもあります。その場で選択肢を示し、クライアントと議論しながら方向性を決めていくことで、納得感のあるブース作りにつながると考えています。

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