映像演出の現場で磨く技術と感性|イベントのしごと

イベント現場には数々の工夫や試行錯誤が詰まっている。本記事ではテクニカル部門で働くタケナカ・髙家孝太郎氏に現場での喜びや課題、新たな機材がもたらす可能性について、現場の第一線で活躍する視点から語ってもらった。(掲載=「見本市展示会通信」2024/12/15号)

―これまでのキャリアについてお聞かせください

タケナカに入社して今年で7年目になります。現在はテクニカルオペレーション課に所属しています。7年目ともなると現場に出る機会も増え、当社の場合は技術部門の人数はそれほど多くありませんから、比較的早い段階から現場で責任あるポジションを任されることになります。

入社当初は営業を希望していましたが、営業をする中で、機材や現場の知識が不足していると提案が難しい場面が多くありました。それがきっかけで、もっと現場に近い仕事がしたいと希望を出し、技術部門へ異動しました。

営業として働いていた時期も設営や簡単なオペレーションを手伝うことがあったので、もともと機械を触ることが好きだったことから、自分には現場での仕事が合っているかもしれないと感じるようになりました。実際に技術部門として現場で働くようになってからは、営業時代の経験も活きていると思います。

―印象に残っている仕事はありますか

最近はコンサートの仕事も多いのですが、公演が終わった後に、お客様から「映像がすごく綺麗でした」と直接声をかけていただいたんです。普段、こうしたフィードバックをいただく機会は少ないので、とても嬉しかったですね。

その現場は特殊な映像機材やステージセットがあったわけではなく、シンプルに1枚の大型スクリーンで映像を見せるかたちでした。それでも映像のクオリティが高く、高い解像度やディテールの細かさがお客様にしっかり伝わったのだと思います。また「引き算の演出」がとても上手く機能しており、照明を効果的に見せることで映像が際立ち、全体の雰囲気がとても印象的でした。

―仕事をする上でのこだわりを教えてください

周りのセクションと協力しながら空間をつくるなかで、些細なものでも見る人が違和感を感じないよう、全体のバランスを崩さないことを心がけています。現場で使う機材の選定一つをとっても重要です。同じ映像でも、信号の入力方法や機材の組み合わせ次第で見え方が変わってしまいます。そのため、細かい部分に気を配りながら、最適な方法を模索するのがテクニカル担当としての役割だと感じています。

現場では予期しないトラブルが発生することもあります。そのような場合には、限られた機材や条件の中で最大限のパフォーマンスを引き出すため、リスク分散を意識した配線や信号ルートの設計が欠かせません。スピード感を持ってリカバリーすることも求められるので、経験を積む中で少しずつ技術を磨いています。

―注目している機材はありますか

ここ数年で、特にメディアサーバー *1 というジャンルの機材が急速に普及してきたと感じます。以前は複数の機材を使って表現していたことが、メディアサーバー1台で完結するようになりました。演出サイドでもメディアサーバーがあればできることが増えるという認識が広がりつつあり、業界全体でその存在感が増しています。メディアサーバーの分かりやすい利点として、最近ではプリビズ *2 を活用して、現場での見え方を事前に共有する手法も注目されています。現場での修正を最小限に抑えながら、全体のクオリティを高めることが期待されています。

*1 メディアサーバー=映像や音声などの複数のデジタルコンテンツを一括管理し、リアルタイムで再生・制御するシステム。大規模イベントやコンサートでの活用が進む。
*2 プリビズ=プリ・ビジュアライゼーション(Pre-visualization)。最終的な仕上がりのイメージを事前に視覚化する技術やプロセスのこと。

―確かに便利ですね。現場の課題解決にも役立ちそうです

現在の課題として、現場でのスケジュールがタイトである点が挙げられます。労働環境の問題ではなく、準備段階で内容を十分に詰めきれず、現場での修正を余儀なくされるケースが発生してしまうという点です。メディアサーバーを使い、完成形に近いプレビューを全員で共有することで現場での微調整がスムーズになり、より高いクオリティが期待できると考えています。

完成した映像を見てお客様が楽しんでいる姿を見ることが、やはりこの仕事の一番の喜びです。そのような喜びを支える「美しい仕事」を追求することが、今後の目標でもあります。 

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