デザイン性と持続可能性が共存する空間演出 ~NEW ENERGY TOKYOと見本市先進国・ドイツの動向から探る~

NEW ENERGY TOKYOとは

2月14日から16日の3日間、国立代々木競技場第一体育館で開催される「NEW ENERGY TOKYO 2025 (ニューエナジー東京)」はオクタノルムのシステム部材を使って創造性に富んだイベント空間の実現に取り組む。開催まで1カ月を切った今、ニューエナジー東京の全体空間のプロデュースとコーディネートを手掛ける空間・施工ディレクターの原 数馬氏に話を聞いた。

NEW ENERGY TOKYO 空間・施工ディレクター原 数馬 氏(株式会社ゼロブロック)

──どんなイベント?


「ニューエナジー東京」は日本と世界の素敵な文化が集まるクリエイションの祭典です。人々の潜在的な創造性を刺激し、次世代へバトンを渡していくために、イベントでは〝クリエイションが人を豊かにする〞を掲げ、日本の感性やカルチャーを世界に発信することを目指しています。6回目を迎える今回は、重要文化財に登録された国立代々木競技場第一体育館で開催します。


──内容は?


日本の民芸や職人技といった伝統的なものから、先進的な技術やデザインを取り入れたものまで、さまざまなクリエイションが一堂に集まります。ただ展示するのではなく、ファッションやアートを組み合わせて、創造性のある空間で演出します。学生や学校との連携プロジェクトも進めており、インキュベーションを通じた作品も展示します。

過去の様子(新宿住友三角広場で開催)
過去の様子(新宿住友三角広場で開催)
過去の様子(新宿住友三角広場で開催)
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──会場の装飾や空間構成のポイントは?


視覚的にも創造性豊かなイベントを目指していますから、デザイン性やインパクトを重視し、インスタレーション風の空間を構築する計画です。

なかでも注目してほしいところは、会場の最も長い部分、約100メートルを横断するメインストリートです。オクタノルムの部材を使った光るアーチや2階
建てのエリアなど、その長さを活かしたアートの展開が行われます。

──なぜオクタノルムの部材?


「ニューエナジー」は環境問題や社会課題に取り組むことを推進していますから、それは会場計画にも求められます。使用するのは環境負荷の少ない再生可能な部材であることは不可欠でした。とはいえデザインの質は落としたくなく、チャレンジングなものにしたい、と思案しているときにオクタノルムジャパンの瀬戸社長から海外の演出事例を教えていただきました。海外事例を見るうちに、日本でもシステム部材による創造性豊かな空間は工夫次第で構築できるのではと感じ、オクタノルムの部材を活用して設計することになりました。部材のレンタルや施工を手掛ける西尾レントオールにも協力いただきました。

出展者から(オクタノルムジャパン)

オクタノルムジャパン 瀬戸 健之介 社長

 原さんから「ニューエナジー」の概要をうかがい、“クリエイションの祭典”というテーマや、サステナブルに配慮した点に非常に惹かれました。環境に負荷をかけず、クリエイティブな空間を作るという考え方は、当社の目指す方向性とも一致します。 
 会場でオクタノルムの部材をふんだんに使っていただく予定と聞き、我々にとっても新しい試みとなると感じました。東京ビッグサイトや幕張メッセなどで行われている見本市とは異なる形態のイベントである点も新鮮だったので、参加を決めました。
 ブースではいろいろなアイデアを画策していますので、当日まで楽しみにしていただければと思います。独・オクタノルムの本社からはCEOのベンジャミン・ブルーダーもかけつけます。初日と2日目のパネルディスカッションでは、より詳しく海外動向や最新のデザインの可能性についてお話しする予定ですので、ぜひ会場にお越しいただき、最新のトピックに触れてください。

見本市先進国・ドイツの今

イベント直前プレトーク 独・オクタノルム社CEO・ベンジャミン・ブルーダー氏×原 数馬氏

「ニューエナジー東京」では独・オクタノルム社のベンジャミン・ブルーダーCEOがゲストとして登場する。ここでは一足先に、見本市先進国・ドイツで実現している持続可能性とデザイン性を両立させた空間デザインやドイツの見本市動向、サステナビリティ活動などを、原氏が日本事情と照らし合わせながら、ブルーダー氏に問いかける。

原 日本の見本市の印象を教えてください。

ベンジャミン 2022年11月に初めて東京ビッグサイトを訪れたのですが、使用されているアルミシステムの量に感銘を受けました。世界中の見本市でアルミシステムが使用されていることを実感できましたし、再利用可能な部材はこれからも見本市にとって必要不可欠な要素でありつづけるであろうと再認識できました。洗練されたブースではオクタルミナなどLEDパネルの導入が進んでいましたね。ブースに限らずエントランスでも目立つ形で活用されていたことを覚えています。
来場者の多さにも驚かされました。デジタル化が進んでいる東京のような都市でも、リアルイベントへの関心が薄れていないことがわかり、少なくとも今後数十年間は、イベントというものはバーチャルに取って代わられることなく、存在し続けるだろうと感じました。

独・オクタノルム ベンジャミン・ブルーダーCEO


原 日本では、オクタノルムの部材=基礎ブースというイメージが強いです。

ベンジャミン 原点は柱と梁からなる基礎ブースですから、いまだにこのイメージを持つ人がいることも事実です。しかし実際は、かなり前から高度なデザイン性のある空間を提供しています。


 昨今はデザイン性だけでなく、環境に配慮できるかどうかに注目が集まります。ドイツでは見本市が生む環境負荷に対してどのような対策を行っているのでしょうか。


ベンジャミン 環境負荷軽減への取り組みは、政府主導でまず主催者や出展者に向けて発信され、続いて会場やサプライヤー・メーカーに推進されます。具体的には多くの会場や主催者が、設営中に木材を切断したり削ったりする行為を禁止しています。つまり会場内で廃棄物を出すことができないので、ディスプレイ会社はブース設計の段階から、ごみを出さない、環境に配慮したデザインを心掛ける必要があります。そして再利用可能な部材によるブースが求められるということは、ディスプレイ会社だけでなく、出展者もその意識を持つ必要があります。ドイツでは、見本市に関わるすべての人々が、同じ方向性を持って行動することが求められています。
なお、昨年はドイツ企業500社が自社のCO2排出量を計算し、政府に報告する義務を負いました。今年はその対象が1万5000社になると想定されています。ブースから出る廃棄材もCO2排出の原因として報告書に記載が義務化されており、このテーマは出展者にとっても重要な課題となっています。

ベンジャミン ちなみに日本のサステナビリティに対する取り組み状況はいかがでしょうか。


 主催者や見本市、出展者の〝マインド次第〞が続いているのが現状です。パンチカーペットは、年間約100万m敷かれて剥がされ、そのまま捨てられていると聞きます。業界で「しょうがない」と黙認されている部分もあるので、今後は「捨てる前に何かできないか」とアップサイクルの思想を持つことが重要でしょう。「ニューエナジー」ではアップサイクルに取り組んでいます。具体的には壁面
装飾に使用したテキスタイルを捨てずに、ノベルティバッグに生まれ変わらせる
というもの。プロジェクトはインキュベーションもかねて服飾学校の学生たちに縫製を依頼しました。受け取った側は記憶にも残りますし、イベントのアップサイクル実績として残していける点も良いと思っています。


ベンジャミン とてもいい企画ですね。

原 オクタノルム社のSDGsに向けた取り組みをお聞きしたいです。

ベンジャミン 当社は世界40カ国以上から120 社以上の施工会社が加盟する「OSPI(Octanorm Service Partner International)」というネットワークを構築し、知識の共有や情報交換を行っています。そのなかでプロジェクトや部材、労働人材を連携させて、人や物の移動を最小限に抑えてCO²排出量の削減に取り組んでいます。また加盟企業には自社に限らず、顧客やパートナー、仕入れ先やサプライヤーが持続可能性に取り組んでいるのかという点を確認させることで、意識付けを行っています。

原 ドイツではどのような部材のニーズが高いのでしょうか。


ベンジャミン 片面または両面にLEDを簡単に組み込むことができ、電気技師などの資格なしに簡単に接続・拡張できるフレーム部材のオクタルクスは特に人気です。ほかにもトレンドになっているファブリックにLEDを仕込んだオクタルミナ、アルミフレームが見えないオクタウォールといった製品は見本市だけでなく、店舗什器として成功を収めています。日本でも店舗利用が進んでいますね。
現在、ドイツの見本市業界は日本と同様に業界の労働力不足への対応が課題となっています。施工時間や準備時間の短縮、組み立てのシンプル化のニーズは高く、結果としてシステム部材はこれらの課題に向けたソリューションとして広く認知され、導入が進んでいる状況です。
当社は床材から天井まで、すべての構造要素を提供できるフルシステムのサプライヤーですから、時代の課題やニーズにあわせて、部材のクオリティと使いやすさを追求して開発を進めることができるのです。


原 見本市以外での活用についてもお聞きしたいです。


ベンジャミン 事例をお見せします。一つ目はグラフィックアーティストのための仮設アートギャラリーです(写真①)。アルマイト処理されたマキシマをフレームにして、壁面がオクタルミナとなっています。短期間のギャラリーですから、取り扱いが簡単でありながら、高いデザイン性を実現するためにシステム部材が採用されました。
二つ目は美術館の事例です(写真2)。一体型スクリーンや前面取り付け型スクリーンに対応できるオクタルミナで空間を整えました。最大高さ5mのフレームをLEDファブリックと組み合わせることで最大限に鮮やかな色彩を実現しました。
三つ目のプロジェクトは、プールプロデューサーのショールームです(写真3)。ここでも壁面と天井にオクタルミナが採用されています。天井のパネルは防音ファブリックで、優れた音響環境を実現しました。

写真1
写真2
写真3
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原 商業施設やアミューズメント、展覧会など、展示会や見本市以外でも活躍できると思っていますが、どうすれば認知を拡大できると思いますか。


ベンジャミン 有効なツールは見本市でしょう。多種多様な業種の人々に接触するチャンスがありますから、オクタノルムの部材がどのような価値を提供できるのか、幅広く伝えることができます。新しいアプローチで言えば、最近AIを活用したテクノロジーサービスへの投資も進めています。新規層からの認知や市場開拓につながる可能性があると思っています。


原 AIの新しいサービスは「ニューエナジー」でも紹介されると聞きました。どのようなものでしょうか。


ベンジャミン ブースデザインに特化したAI画像生成ツールを開発しました。
AIデザインを現実のブース施工に結びつける、世界初の試みとなります。使い方は簡単で、WEB望のプロンプトのほか、写真風やAIスケッチ風、ブースに人がいるかどうかなどを出力イメージの指定を行うと、約20秒でAIブースデザイナーが素晴らしいデザインを作成するというものです。色の正確なパターンの指示、アップロードした写真をベースにした新たなデザインの作成も可能になります。リリースから半年ほどになりますが、現在数百人のユーザーに利用いただき、生成された画像は数万枚以上。AIブースデザインの分野において、世界最大のデザインライブラリの一つと位置づけられるようになっています。


原 ありがとうございました。

 ニューエナジーではオクタノルム社、西尾レントオール社と協力し、感性をアップデートして帰っていただけるような場を目指して現在準備を進めています。
 きっと新しいイベント空間のかたちが生まれると思っています。どのような表現が可能になるのかを見てほしいので、興味のある方は、ぜひ会場に足を運んでください。

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