“好き”を活かしてブースをデザインする|イベントのしごと[ボックス・ワン/デザイナー]

ブースデザインや施工を手掛けるボックス・ワンは2025年3月4日から7日までの4日間、東京ビッグサイトで開催された「JAPAN SHOP 2025」に出展した。毎年自社ブースを独自にデザインしているが、今年は例年とは異なるアプローチで来場者の注目を集めた。「出展者が使いやすい、接客しやすいブースデザインを心がけています」と話す若手デザイナー・落合香澄氏に今回のプロジェクトを振り返ってもらった。

(掲載=「見本市展示会通信」2025/4/15号)

ボックス・ワン 企画部 デザイナー 落合 香澄 氏

――今回のブースのテーマは何でしょうか

落合 「既存クライアントを楽しませること」と「プライベートな商談スペースを設けること」が方針でした。楽しませるというテーマゆえに比較的自由な発想が許されていたので、非日常的な空間をイメージしたブースを考えることにしました。

最初は親しみやすさから「映画館」と「ゲームセンター」の2案を検討。会期3か月前には、それぞれパースや平面図を用意し、最終的には従来の落ち着いたブースとのギャップが強調できるという理由から、ゲームセンター案が採用されました。来場者に楽しんでいただけるよう、実際に体験できるクレーンゲームも2台設置しました。

――ブースの構成で意識したことは

落合 今回プロジェクトメンバーのアイデアで、当社の公式キャラクターを来場者の投票で決める参加型企画を実施しました。社内で複数案を作成した上で、4体の候補キャラクターをブース内に展示し、来場者に“推しキャラ”を1体選んで投票してもらうというものです。

本企画を空間の大きな柱として、キャラクターのカラーリングに合わせた照明演出や装飾の色味を決めていきました。キャラクターは4体それぞれにイメージカラー(水色、ピンク、緑系の蛍光色、濃い青)を持たせています。商談スペースでは、LEDチューブライトで4色が順番に切り替わるように演出し、たくさんの色を使いながらも、キャラクターを軸に統一感のある空間を目指しました。

また細かい点ですが、投票に使うボールは星や月の形のものも加えました。「UFOキャッチャー」をモチーフにしたので、宇宙を連想できるアイテムにしたかったんです。途中で「丸いボールだけでもいいのでは」という意見もあったのですが、そこは譲れませんでした。

木工造作を控えめにし、オクタノルムやマキシマライト部材で構成した点は、実は裏テーマとして「サステナブル」も意識していました。強度の問題で、本来であれば木工による壁面造作が必要な部分は、通常より厚みがある特注ベニヤを使用し、インセット形状に加工することで対応しました。仕上げには光沢のある化粧板シートを使い、ネオンの反射と組み合わせることで、質感や雰囲気も損なわないようにしています。

――キャラクター制作も工夫があったそうですね

落合 社内からラフ案を募集して、15人ほどからアイデアを出してもらいました。その中から4案を選び、社内と来場者による投票で順位を決めました。社内では「BOX・1ファミリー」が1番人気でしたが、来場者投票では「ワン」が1位、「スワン」が2位と、結果が大きく異なり面白かったです。

イラストレーターの選定やキャラクターのグラフィック仕上げもこだわっていて、社内でかなり議論もありました。「落書きでもいい」という声もありましたが、ブース全体のクオリティとのバランスを考えて、しっかり作り込もうという方向で進めました。

――普段のクライアントワークと比べた違いは

落合 ある意味クライアントが“自社”ということで、自分自身が納得できるクオリティを追求しなければならない点が大きかったです。もちろん迷うこともありましたが、自分の得意を活かせる場面も多くて、楽しみながら進めることができました。

チーム全体の協力も大きくて、普段以上にコミュニケーションをとりながら、一つの空間をつくる喜びを実感できたと思います。

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