最終回。5回目となる今回は、少し視点を広げてブースを起点としつつ会場全体のデザインの在り方についてお伝えしよう。
これまでの話の中で、慣習的に「これは絶対ダメでしょう」と考えられていたものが、来場者の心理を起点に考え直して工夫を加えると、集客効果を高める有効な手段として考え直すことができる、という事実を解説してきた。それでは、今回のテーマは、「会場通路」について話してみよう。
「通路が狭いと集客効果は上がり、通路が広いと多くの出展者が成果を出しにくく、苦戦する」
これは、日頃出展者に寄り添い、出展をサポートしている経験値の高い方であれば、「そうそう、その通り」と、共感してくださることだろう。
多くの出展者は、通路幅の広い大通りにブース位置が決まると、「良い場所に決まった」と喜ぶはずだ。しかし、ブースを設計している立場から言えば、そのような通路幅が広い箇所はかなり慎重に考えなければいけない危険な小間位置となる。なぜだかお分かりだろうか。
来場者は基本的に「つかまりたくない」と思いながら会場内を歩いている。興味を持ったところにはもちろん近づくが、全てのブースに立ち寄るわけにはいかないからだ。
そうなると、通路を歩く際には、基本的にブースから離れた位置、つまり通路の真ん中付近を歩くことになる。仮に通路幅が7mあるようであれば、ブースから3.5m離れた辺りを歩く、という感じだ。この「ブースから3.5m離れた距離」。この距離を来場者に詰めてもらう、ブースに近づいて来てもらうことが、実は相当に難しい。
このことでお分かりかと思うが、もし通路幅が狭いと来場者は自然にブースの近くを歩くことになり、気になったブースに立ち寄りやすくなる。反面、離れていると、そのブースに近寄ろうと思うのは、「かなり気になった時」のみとなる。これが、通路が狭いと集客効果は上がり、広いと集まらなくなる、というその理由だ。
では、会場内の通路を全て狭くすると、全出展者の集客効果を高くできるのではないか、と思われる方もいるかもしれない。確かに、そうすると出展者全員の集客結果は出やすくなることだろう。
しかし、一方で展示会場全体をみれば、大型小間出展者の周辺や、会場の「顔」としてのメインストリート感が失われてしまい、展示会全体としてのイメージを損ねてしまう可能性が高くなってしまう。やはり通路幅の広い箇所はあった方がよい、というのが私の意見だ。
そこで、お勧めしたい方法がある。「広い通路の真ん中にハイテーブルを設置し、そこを出展者の待機スペースとして使っていただく」という手法だ。通路幅は7mあってもいい。ハイテーブルを通路の真ん中に規則的に並べ、出展者に待機場所として使っていただく。そうすると会場通路は中心付近が賑わうようになり、来場者は自然にブース近くを歩くようになる。これは、当社が石川県の集合ブースで実際に試し、毎回確実に集客に成功している手法を応用した考え方だ。
避難動線の確保もあるので、全ての通路をこのようにはできないであろうが、その通路を「展示会場のメインストリート」として位置づけて会場構成を行うことで、展示会全体としての印象も作り上げることができるだろう。
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以上、ブースデザインの観点から考えれば、会場構成についても様々な工夫・改善の可能性があることが感じられたのではないだろうか。これまでお伝えしてきたように、「それはだめでしょう」という慣習のような考え方も、来場者目線から捉え直して工夫を加えると、実は集客効果を高める手法となり得る場合がある。
展示会業界は今、変化のタイミングに来ていると感じる。このような時こそ、これまでの「当たり前」を今一度見直してみてはどうだろうか。きっと、そこに業界が進化する可能性が隠れている。そう感じている。
竹村 尚久|NAOHISA TAKEMURA
SUPER PENGUIN
代表取締役/展示会デザイナー
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