【トークセッションレポート】機材の最新動向とAI活用 日本映像機材レンタル協会(JVRA)

日本映像機材レンタル協会(JVRA)は7月17日、ホテルイースト21東京で「業務担当責任者会議」を開催した。当日はトークセッション・第一部「ISE・InfoComm 海外展示会 視察報告」が行われた。「ISE 2026」を視察したシネ・フォーカスの栁下一貴氏とヒビノシグマライズの菊地真生氏、「InfoComm2026」を視察したタケナカの錦戸大輝氏の3名が登壇し、進行役の光響社・占部吉直氏、技術的な解説役としてシーマ・石丸隆氏が加わる形でセッションは進んだ。続く第二部では、イベント業界に広がる AI 活用について意見が交わされた。

栁下氏
栁下氏

シネ・フォーカスに入社して10年目に突入しまして、今年の4月から当社 LED チームの主任を務めております。

菊地氏
菊地氏

ヒビノシグマライズに入社して5年目になります。いつもはオペレーションしている側なので、今日はすごく緊張しているのですが、頑張りたいと思います。

錦戸氏
錦戸氏

新卒でタケナカへ入社して、今年9年目になります。普段は営業の仕事をしております。海外視察は私、今回が初めての参加になります。

  

【第一部】海外展示会視察報告

「ISE2026」報告

まずは「ISE 2026」 の概要が紹介された。ISE(Integrated Systems Europe)は、世界最大級の AV およびシステムインテグレーション分野の展示会である。2月3日から6日まで、スペイン・バルセロナの Fira de Barcelona Gran Via で開催。世界中から92,170人の来場者を迎え、過去最高となった。出展者は初出展323社を含む合計1,751社となった。

栁下氏
栁下氏

「Vanish Air Rental」という機種は、透過率92%を謳っており、背景の演出を妨げずに映像を映せる LEDディスプレイとして紹介されていました。従来パネル中央にあった電源ユニット(パワーサプライユニット)が、スリムなフレームに統合されていて、非常に透過率が高く、かつ軽量というモデルです。
私はまだ実物を触ったことがないので、LEDチームのはしくれとして非常に組んでみたくてしょうがなかったです。展示されていた機材も、その透過率の高さゆえ、中の金具や配線まで見ることができました。

菊地氏
菊地氏

細かくドットに見えるところが LED で、丸く見える部分が実際に透けています。


「PT-HTQ20」/ Panasonic 社 1チップ DLP RGB レーザープロジェクター
栁下氏
栁下氏

新型プロジェクター「PT-HTQ20」です。1チップ DLP の RGBレーザー光源を駆使した「VIVID PRIME 技術」を搭載し、同社プロジェクターとして初めて Rec.2020の色域に対応したとのことです。Rec.2020にした場合、輝度は14,000ルーメンまで下がるということでした。
現地では、Rec.709で20,000ルーメン、Rec.2020で14,000ルー メンの色域比較デモがありましたが、色の再現率が非常に高く、輝度が下がっている感じは全然気にならない印象でした。

占部氏
占部氏

石丸さん、Rec.2020(より広い色域の規格)への対応というのは、技術的にはどれくらいすごいことなんでしょう。

石丸氏
石丸氏

原理的には可能な技術ではあったんですが、(3チップ並みの色性能を)1チップのレーザーで実現したというのが今回のポイントです。しかも、色域を広げると輝度が下がってしまうイメージも払拭しています。
LEDディスプレイ全盛と言われる中で、プロジェクターが盛り返してくる1つのポイントになったんじゃないかな、というのはすごく感じました。

  


見せ方に工夫を凝らしたブース

スペックの新しさだけでなく、展示の見せ方に工夫を凝らしたブースも紹介された。リング状に設置された透過型 LED の内側からプロジェクターで映像を投影する構成(LANG 社ブース)で、「透過型 LED とプロジェクターによる映像を組み合わせた展示になっていて、それぞれのいいところが引き出されている」(菊地氏)。

LiGHTLiNK 社ブース

角が丸い珍しい形状の LEDディスプレイも展示されていた(LiGHTLiNK 社ブース)。「本展は透過型LEDの出展が多かったが、加えて今回、角丸の LEDディスプレイも色々なブースで見られた。形を意識したパネルがたくさんあった」(菊地氏)。

EPSON 社ブース

透明パネルとミラーを組み合わせた立体構造にプロジェクターで投影する演出(EPSON 社ブース)があり、栁下氏は「透明なパネルとミラーで立体的に構成したものに対してプロジェクターでブレンディング投影することで構築された、非常に目を引く演出」と話した。「日本だとなかなかない演出。圧巻だった」とも語った。

続いて、見せ方の工夫という点で、かなりのインパクトを放っていた展示についても触れられた。

Optoma 社 水中プロジェクター
占部氏
占部氏

これ、一体何をやっているんでしょうか。

菊地氏
菊地氏

水中にプロジェクターを設置して、水中に投影する展示でした。防水・潜水対応で、世界初の水中プロジェクターとのことです。スペック等の詳細は未発表でした。

石丸氏
石丸氏

驚きましたね。水中にプロジェクターを入れられる時代がとうとうやってきたかと。水面や水の下に映像を映したいという要望自体は皆さんも聞いたことがあると思いますが、どうしたってハードルがあるんです。光の屈折の問題もありますし、明るい場所では投影しにくいという条件もある。実際の長期運用がどうなのかなど気になる点はありますが、これが実現できるようになったというのは非常に興味深いですね。この先が楽しみです。

  


「InfoComm 2026」報告

続いて「InfoComm 2026」を視察した錦戸氏の報告に移った。InfoComm(インフォコム)は、北米最大級のプロフェッショナル AV 機器・情報通信技術の展示会。年1回、ラスベガスとオーランドで交互に開催している。今年は6月13日から19日まで、ラスベガスコンベンションセンターで開催し、94カ国から28,132人が来場した。

錦戸氏
錦戸氏

LEDメーカーが多いエリアでは、全体的に、やはり COB(チップオンボード)の1mm 台のピッチのものが出展されていま した。あと、オールインワンタイプの LEDディスプレイも多く、注目度の高さを感じました。

石丸氏
石丸氏

確かにオールインワンで昇降機能付きや壁掛け対応というのは、これからもっと増えてくるでしょうね。

「Vanish Acoustics」/ ROE Visual 社 透過型 LED ディスプレイ
錦戸氏
錦戸氏

先ほど ISE 報告の中で「Vanish Air」のお話がありましたが、透過型LED は InfoComm でも見られました。中でも私が注目したのは、屋内透過型LED「Vanish Acoustics」です。これまで、イマーシブな空間をつくる際は、プロジェクターか高輝度LEDディスプレイが選択肢でしたが、そこに透過型LEDが加わるのか、というのが今回の発見です。中にスピーカーが仕込まれていて、音を透過させて空間演出に使えます。
空間演出でプロジェクターや LEDディスプレイを使うとき、スピーカーをどこに配置するかは毎回悩むところですが、背面を使えるのは大きな利点です。

占部氏
占部氏

透明マイクロLEDディスプレイというのもあったようですね。

錦戸氏
錦戸氏

今まで有機EL(OLED)タイプの透明型ディスプレイというのは私も色々見てきたんですけど、現地で「これはちょっと違う LEDディスプレイなんだ」という風に紹介されました。明るくて、いくつでも連結できるというような話でした。

石丸氏
石丸氏

従来は23インチや27インチを連結して使っていたものですが、今回展示されていたのは1枚もので40インチですよね。相当きれいだったのではないかと思います。

錦戸氏
錦戸氏

はい。私も驚いてずっと見ていたら、出展者の方に声をかけてもらい、お話しすることができました。

  


【第二部】業界に広がるAI活用

トークセッション第二部は、第一部と同じメンバーで「AI 活用」をテーマに実施された。セッションの冒頭、石丸氏から会場に向けて挙手アンケートが行われた。無料版も含め、何らかの AI を業務で使っている参加者が多数にのぼった一方、有料プランでの利用は全体の3分の1程度、見積もりやプレゼン資料など具体的な業務判断に AI を活用している参加者はごく一部にとどまった。現時点では、試している段階の企業が大半であることがうかがえた。

  

それぞれの AI 活用

パネリストからはそれぞれの立場での AI 活用について意見が挙がった。営業提案の場面では、現地下見の際に撮影した写真に映像を合成し、「実際の現場ではこのように見える」イメージを作った上で、顧客に提案する使い方が紹介された。以前は専門的な映像編集ソフトがなければ難しかった作業が、AI によって簡易にできるようになったという。

一方で、機材の操作で不明点があった際、取扱説明書を探す代わりに AI へ質問するという使い方も挙がった。ピンポイントで答えが返ってくる点は評価しつつも「まだあまり取り入れられていない」「結局、最後は取扱説明書の PDF に行き着くことが多い」といった率直な声もあった。

  

投げかけられたテーマ「このままでいいのか」

セッションの時間の多くは、具体的な AI 活用術というよりも「イベント・レンタル業界はこのままで生き残っていけるのか」というテーマに割かれた。石丸氏が生成AI を使って作成した資料をもとに、顧客側が本当に求めているものは何か、機材を持つことの意味、これから求められる人材像といった論点が次々と提示され、会場に投げかけられる形で進行した。もっとも、これらは生成 AI が導き出した仮説的な提言であり、詳細なデータ検証というよりも、業界の今後を考えるきっかけとして提示された。

本セッションでは提案準備や日々の調べものといった身近な使い方から、業界の先行きをめぐる大きな問いまで、AI が関わる領域の幅広さが垣間見えた。現在は、AI というテーマ自体がまだ発展途上である以上、議論を重ねながら、各社が自分たちなりの向き合い方を探っていく段階だと言えそうだ。

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