【レポート】JR東が未来の暮らしを見せた「GATEWAY Tech 2026」

東日本旅客鉄道(JR東日本)は5月14日、15日の2日間、高輪ゲートウェイシティで「GATEWAY Tech TAKANAWA 2026」を開催した。

開催地の高輪は、日本で初めての鉄道が海の上を走った場所でもあることから、JR東日本は高輪ゲートウェイシティをイノベーションの地として「100年先の心豊かな暮らしのための実験場」を掲げている。GATEWAY Tech TAKANAWA 2026はイノベーションや共創を軸にスタートアップ、企業、研究機関など114の出展者が地球規模の社会課題解決に向けたソリューションやプロジェクトを出展。2日間で約4500人が来場した。

「未来の暮らしの実験場」を体現するイベント

イベントは高輪ゲートウェイコンベンションセンターLINKPILLAR Hallでのブース展示や、駅前の広場であるGateway Parkでの体験デモなどが展開された。

松尾 俊彦氏(東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 まちづくり部門)

JR東日本の松尾 俊彦氏は「高輪ゲートウェイシティが掲げている考え方が『地球益』。100年先の心豊かな暮らしづくりのための実験場と位置づけている」と街が掲げる方針とともに、1年間でおよそ50の実証実験を実施してきたと説明。「新しい未来の暮らしに向けた実験を進めているが、体験していただく機会はなかなかないため、この機会を設けて多くの人に披露することで、実証実験をステップアップさせたり、新しい人々に仲間に加わってもらったりすることで新しいサービスづくりを進めていきたい」と開催の狙いを語った。

タッチ不要の「ウォークスルー改札」

R東日本はタッチ操作を必要とせず改札を通過できる「ウォークスルー改札」を展示した。

ウォークスルー改札はUWB(Ultra Wide Band/超広帯域無線通信)と呼ばれる技術を活用したもので、改札機に取り付けたアンテナとユーザー端末が通信し、1cm単位で距離を高精度に把握することで、端末をかざすことなく改札を通過できるというもの。

展示では専用アプリケーションを入れたデモ用端末を使った通過実験を披露。ベビーカーに端末を置いた状態での通過も見せ、端末と改札機が通信し、距離を測定することで、従来のように改札機へタッチすることなく通過できる様子を紹介した。

担当者は「大きな荷物を持った方や車いすの方、ベビーカーをご利用の方にメリットを感じてもらえる」と説明。ウォークスルー改札は、既存の改札機を置き換えるのではなく、アンテナなどを追加するアドオン型の仕組みにすることで、導入しやすいシステムとして開発を進めていくとして、2027年春の実証を目指すという。

自動運転車両「ロボバス」

丸みを帯びた青い車の外観。車の窓は大きい。大きい窓から載っている人が見え、コントローラーのようなもので捜査している様子。
会場では実際に車両を走行させたデモンストレーションを披露。周囲の景色を眺めやすい大きな窓は移動時間も楽しくなるデザイン

ピクセルインテリジェンスはハンドルやブレーキペダルを持たない自動運転向けの電気自動車「ロボバス」を展示し、次世代モビリティによる新たな移動のあり方を提案した。

ロボバスは6人乗りで、1回の充電で約100〜150kmの走行が可能。事前に作成した走行ルートのマップ情報をもとに、車両が現在位置を把握しながら走行する仕組みという。

担当者は「観光地で駅から目的地まで少し距離があるような場所も移動中から景色を楽しんでいただける。交通課題の空白を埋める用途だけではなく、観光での活用も期待できる。ラストワンマイルの移動を支えるロボバスが公道を走る未来も遠くないのではないか」と期待を語った。

折りたたみ可能な小型電動モビリティ「タタメルバイク」

モビリティやロボット開発を手掛けるスタートアップのICOMAは、折りたたみ可能な小型電動モビリティ「タタメルバイク」を展示した。

「タタメルバイク」は最高速度は時速20km、航続距離は約30kmで、車体重量は約23kg。車両区分は電動キックボードなどと同じ特定小型原動機付自転車に分類される。着座式にすることで、一般的な電動キックボードよりも安定感のある走行を実現している。

担当者は「玄関先にも置けるため、駐車場がないマンションに住む方でも利用できる。近距離移動など、日常のさまざまな場面で使えるモビリティを目指している」と語る。

また現在は単なる移動手段ではなく“ロボット化した乗り物”としての開発も進めている。収納時には“顔”のようなインターフェースを表示し、触れると反応するインタラクション機能も備えた。走行モードへ切り替えると、顔の表示はスピードメーターへ変化。ロボットモードから乗り物モードへ切り替わる。将来的には搭載したカメラなどから周辺情報を取得し、AIアシスタントのように走行をサポートするインターフェースの実現も目指しているという。担当者は「車体そのものの開発と、乗り物をロボット化していくという2つの軸で開発を進めていく」と語った。

アグリテック育成比較展示

インキュベーション施設「LiSH」に参画するアグリテック系スタートアップ4社は、植物関連ソリューションを紹介した。

今回の展示では、植物やグリーン分野の課題解決に取り組む企業の技術を紹介。各社のソリューションによる植物の生育比較を提示した。

テラフォームは「スーパースポンジ」を活用した取り組みを展示。「スーパースポンジ」は土に混ぜることで保水力を高める効果があることから、干ばつなど水不足に悩む農業現場への貢献につながるという。

エンドファイトは、植物内生菌「DSE」を活用した技術を展示。微生物の力によって植物を内側から元気にするアプローチを提案し、DSEを加えた場合と加えていない場合の比較を行った。

WAKUはグルタチオンを活用した植物向けソリューション「WAKUFUL」を紹介した。「WAKUFUL」は化学肥料とは異なるアプローチで植物本来の力を引き出すことを目指している。

SynecOは生態系の考え方を街づくりに活かす取り組みを展示した。単一の植物を育てる従来型の環境ではなく、自然界のように複数の植物が共生する環境を再現。多様な植物が存在する都市づくりに向けた、植物の組み合わせを提案した。

都市緑化管理ソリューション

アグリノームは四足歩行ロボットとともに、ロボットを活用した都市の緑化管理に向けたソリューションを提案した。

展示されたのは、四足歩行ロボットが自動巡回しながら、背面に取り付けられたカメラなどの各種センサーで植物の健康状態を診断する仕組み。植栽の管理には専門的な知識や多くの作業負担が必要となるが、植物の状態を判断するノウハウを持つ人材が不足していることから、センサーによるデータ取得と解析によって管理を効率化することを目指している。

取得するデータは植物の三次元構造や表面温度など。水分ストレスのほか、光合成に必要な光量が十分に確保されているかなど、植物の生育環境を定量的に評価する機能の開発も進める。屋外だけでなく屋内緑化への応用も視野に入れ、空間設計や管理方法の改善につなげていく。またデータをもとにデジタルツインを構築し、植物の生理データを組み合わせることで仮想空間上でも健康状態を診断できるという。

担当者は「植物の生理状態をいち早く検知できれば、どの場所でどのようなストレスが発生しやすいのかが分かる。植栽管理会社が重点的に対応すべき場所を判断しやすくなり、労務負荷の低減につながる」とアピールした。

3Dフードプリンターでつくる未来の食材

「ラーメン工学科」というイベントを企画している同研究室は、3Dプリンターで作ったDNAのようならせん形状の麺「ダブルツイスト麺」など、新しい食感や形状の開発にも挑戦している。熱加工以外にも、ペースト状の食材を押し出して成形する方式や、家庭用プリンターのようなインクジェット方式など、食材の特性に合わせた技術開発も進めているという

山形大学工学部は未来の食をテーマにした研究成果を紹介。実際に食べられる食品を造形する「3Dフードプリンター」や原材料の加工技術「コールドフード」、食体験に関する研究開発を通じた新たな食づくりの可能性を示した。

液体窒素を使った粉末化技術「コールドフード」は約-200度の環境で食材を瞬間冷凍し、粉砕することで粉末化したもので、素材本来の味や香り、栄養価をほとんど劣化させずに保持できる。粉末化した素材を組み合わせることで、味や栄養価を調整した食品づくりにつなげる。また柚子や枝豆は皮やさやごと加工することで、過食部分が増え、廃棄が減るだけでなく風味も増すという。

「3Dフードプリンター」はレーザーの熱で食材を加熱しながら積み重ねて成形する例を展示。卵が熱によって固まる仕組みと同様の原理を利用し形を作る。

また食を味だけでなく体験として捉えた研究も進めており、担当者は「食はどこで食べるのか、誰と食べるのかも、人が感じるおいしさに影響する」と話し、VRなどデジタル技術を活用した食環境の研究も紹介した。

これらの研究は海外レストランとの連携や、高級レストランでの提供など社会実装に向けた取り組みも進行している。将来的には病院食や介護食、宇宙食といった分野への応用も視野に入れているといい、担当者は「食感や形状、栄養価をその人の状態に合わせてコントロールできるようになる」と、パーソナライズされた食の未来に期待を示した。

店舗向けヒューマノイドロボット「Galbot G1」

箱型の商品などは吸盤型のハンドで持ち上げ、ペットボトルのような形状の商品はグリッパーを使う

Galbotはヒューマノイドロボット「Galbot G1」と、Galbot G1を活用した店舗向け自動化ソリューションを提案した。

会場では、無人店舗を想定した「Galbot Store」のデモンストレーションを実施。タブレット上の商品画像を選択して注文すると、Galbot G1が棚まで移動し対象の商品を認識してピックアップ、受け渡しまで行う一連の流れを紹介した。

会話機能も搭載しており、利用者とのコミュニケーションにも対応する。担当者は「接客トークをしたり、その日の天気や相手の服装について話したりすることもできる」と説明。商品提供だけでなく、接客スタッフとしての役割も想定している。

海外ではすでにGalbot Storeとして展開が進み、150店舗以上で導入されているという。実際の店舗利用では、商品を選択後に決済を行い、注文情報をもとにGalbot G1が商品を取りに行く。注文受付から商品の受け渡しまでを自律的に行える。

今後は小売だけでなく工場やホテルなど幅広い領域での活用も見込んでいる。

担当者は「繰り返し行う作業はロボットに向いている。一方で商品の入れ替えなど、人が対応したほうが良い作業もある。ロボットだけで完結するのではなく、人と一緒に仕事をしていく形になる」と話した。

編集/執筆/取材
イベスル編集部

展示会・MICEの最新情報を発信する専門メディア「イベスル」の公式編集部です。東京ビッグサイトをはじめとする見本市会場に足を運び、主催者や出展者への直接取材を通じた「一次情報」をお届けしています。ビジネスチャンスを創出する場としてのMICEの魅力を、現場の視点からレポートします。

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