
| イベント名 | Ehtel -“Release” Party- Produced by SWAG |
| 主催 | UKAB Lab. |
| 制作・演出 | 株式会社SWAG |
| 会期 | 2026年7月22日(水)〜8月28日(金) |
| 会場 | 渋谷ストリームホール(東京都渋谷区) 4F(ポップアップストア/無料)、5F・6F(体験型エキシビション/有料) |
「Ehtel -“Release” Party- Produced by SWAG」は、架空のエナジードリンクブランド「Ehtel(エテル)」の発売記念を装いながら展開される、体験型のエンターテインメントイベントだ。ブランドと開発元の「UKAB Lab.」は架空の設定だが、イベントは現実に開催され、Ehtelも実際に試飲・購入できる商品として用意されている。フィクションと現実が重なり合う独特の構造こそが、本イベント最大の面白さだ。開催直前、企画・プロデュースを担当するSWAGの志満津勇馬氏に、企画の狙いや徹底した作り込みについて聞いた。<聞き手=木下慧輔>

◆架空なのに、本気
――「Ehtel(エテル)」は架空のブランドであるにもかかわらず、作り込みの本気度に驚きます。キャッチコピー「ここから先は、飲んだ人だけ。」には、どのような意図が込められていますか?
志満津 少し複雑なのですが、ドリンク自体のキャッチコピーと、イベントのキャッチコピーは別にあります。「ここから先は、飲んだ人だけ。」はイベントのキャッチコピーで、「忘れられないほど、酸っぱい。」がドリンク自体のキャッチコピーです。
どちらも、ストーリーの先を知った後では、少し違ったニュアンスに感じられる仕掛けになっています。後から「そういうことだったのか」と思ってもらえるよう、さまざまな要素を仕込んでおり、コピーもその一つです。ストーリーに奥行きを与えつつ、背景を知らなくても自然に受け取れる表現になるよう検討を重ねました。
――モチーフである「レテの川」は?
志満津 はい、そこは本当の部分です。古代ギリシャ神話に「レテの川」が登場します。生まれ変わりの際にその水を飲むと、前世の記憶を失って生まれ変われる、と伝えられています。諸説あるようですが、一般には「記憶を消すために飲む川の水」として扱われることが多いようです。
――キャラクターのUKAもかなり作り込まれていますよね。グッズ展開までしている
志満津 UKAは、ある生き物をデフォルメして生まれたキャラクターです。記憶にまつわる生き物を選ぶことで、ストーリー上の意味も持たせています。「何でも良いキャラクター」ではなく、その由来を軸に、チームでデザインを詰めていきました。イベントを体験しながら深く読み解きたい方には、その意味が全て分かってくるはずです。



◆なぜこの企画が生まれたのか
――そもそも架空のブランドを立ち上げてまで、イベントを企画した意図をお聞かせください
志満津 このイベントを企画した理由は、大きく二つあります。一つは、新たなビジネスモデルとして、自分たちで「興行」を手掛けることです。これまではBtoBの仕事が中心だったため、BtoCのビジネスモデルを確立したいという思いがありました。
もう一つは、得意とするメディアテクノロジーやインスタレーションの表現で、自分たちならではの企画に挑戦したかったことです。これまで、そうした表現では、来場者が自由に感じ取るアート寄りの見せ方が多かったと思うんです。個々の表現そのものを鑑賞してもらう側面が強かったのではないかと思います。僕らは、そうした要素を残しながら、メディアアートを体験することでストーリーが見えてくる仕組みを作りたいと考えました。そして、これまでと同じものは絶対にやりたくありませんでした。「何々っぽい」「何々みたい」と言われるのではなく、従来の国内イベントとは異なるものにしたい思いがありました。
――なぜエナジードリンクを題材にしたのでしょう
志満津 ポップアップストアに実在の商品として並ぶドリンクを起点に、現実世界が拡張され、来場者がメディアインスタレーションへ導かれていく構成を考えました。
実際に飲むことで、来場者自身が物語の当事者になったと感じられるアイテムにしたかったんです。また、メディアインスタレーションと相性の良いグッズ展開ができること、そこからストーリーが広がっていく感覚を生み出せることも大きな理由でした。
◆あえて“映え”だけを狙わない

――SWAGは自由度の高い企画で、特に面白さを発揮する印象があります。今回のイベントは(ある意味)主催もSWAGなので、本当にやりたかった企画なのだろうと感じます
志満津 今はInstagramなどのSNSを意識し、「絵になる」「映える」空間で集客するイベントも多いですよね。そこから来場につなげていく。それも一つの方法だと思います。
今回は、そうした“映え”を前面に出した見せ方はしないと決めました。その方針も含めて、この企画の面白さだと考えています。
とはいえ、最終的には来場して楽しんで帰っていただくイベントです。来場者の方がSNSに動画や写真を上げてくださるのは、もちろん大歓迎です。
――どういう意味ですか? 「映える」ビジュアルは用意しているのに集客プロモーションに使わないということですか?
志満津 少し違います。実は4F(ポップアップエリア)は、しっかり「映える」ことを意識して作り込んでいます。一方で、他のエリアにも「思わず写真を撮りたくなる場面」はたくさんあります。
ストーリー上、全てを明かすことはできない制約があります。UKAB Lab.がSWAGにメディアインスタレーションの制作を依頼しているため、公式に発信できる内容も限られます。「UKAB Lab.が公表しても不自然ではない範囲」にとどめなければならない、ということです。
――ちなみにUKAB Lab.は、どんな無茶ぶりをしてくる企業なんですか?
志満津 それで言うと、「ラボ」の名の通り研究組織で、Ehtelを開発しました。その裏には秘密が隠されていて、来場者にEhtelを試飲してもらうことで、飲んだ人だけが得られるものを用意したいのです。
UKAB Lab.とは、パートナーとしてやりづらいというより、「達成すべき目的」がある、という感じですね。ただ、そこから先の表現の仕方は自由で、結果的にお客様に楽しんでもらえるものであれば「SWAGの皆さんが一番良いと思う空間演出を提供してください」というスタンスです。「お金に糸目はつけないので、やってください」というわけです。
――なるほど。「無茶ぶり」ではなく、信頼がベースにある関係性だったんですね
◆フロアごとに異なる体験
――会場の4F・5F・6Fで、それぞれ全く異なる体験ができるようですね
志満津 4Fは、本格的なポップアップストアとして成立させながら、SWAGの強みを生かした豪華な空間を目指しました。機材と映像を効果的に使い、一般的なポップアップとは異なる見せ方を意識しています。
SWAGにはさまざまなタイプのクリエイターがいるため、それぞれが個性を発揮できる一つの「箱」を作る必要がありました。5Fは、エリアを細かく分け、複数の異なる体験を楽しんでもらう構成です。インタラクティブな要素が強く、アミューズメント的な雰囲気もあります。一方、6Fは全体を統一したデザインとし、5Fとのコントラストを際立たせています。
フロアごとに表現が大きく異なるため、クリエイターからも「一つのイベントなのに、ここまで統一感がなくて良いのか」と声が上がったほどです。「箱」の中身は自由であり、「全体はストーリーによってつながるので、安心して自由に表現してほしい」と伝えました。
――今回、初めてチャレンジした技術はありますか?
志満津 技術の組み合わせで言うなら、今までのイベントで試したことのない演出ばかりです。デジタル技術を駆使したインタラクティブな部分も、五感を使う体験も、ほぼ全てが新しい実験的な展示だと思います。
◆知らなくても楽しめる、知るともっと楽しめる
志満津 一方で、来場者が純粋に楽しめることも大切にしています。ストーリーありきで楽しんでもらうのではなく、何も知らなくても楽しめるし、知ることでより深みに入り込める二層構造にしています。どちらの楽しみ方もできるイベントです。
――38日間の会期ですが、何度か足を運ばないと全部は楽しみきれませんか?
志満津 来場するたびに体験が大きく変わるわけではありません。ただ、各所にストーリーの要素を散りばめているため、一度で全てを回収できるかどうかは人によって異なると思います。中には、まずはインスタレーションを楽しみ、帰宅後にSNSなどで調べて「そんな裏側があったのか」と気付き、再来場時にはストーリーを意識して楽しむ方もいるかもしれません。ですが、まずは思うままに、自由に楽しんでもらいたいです。
――来場者が「おや?」と違和感を持ちやすい、最初のきっかけとなる場所や仕掛けはありますか?
志満津 それは4Fですね。4Fで少し滞在してもらえると、違和感に気付くと思います。
◆作り手としてのスタンス
――企画や制作において、作り手として大切にしていることを教えてください
志満津 クリエイターによってスタンスはそれぞれだと思いますが、僕自身は、どちらかと言えば商業的な「見てもらってなんぼ」という考え方が出発点にあります。なので、お客様が費やした時間に見合うものを提供できているかを大切にしています。チケット代を払ってくださった全ての方に「価値があった」と感じてもらえるものにすることは、他のクリエイターとも共有しています。その上で、自分たちが表現したいものを重ねていく、という順序です。
謎解きイベントは謎解きを、メディアアートイベントはアートを楽しむもの、という棲み分けが多い中で、「Ehtel “Release” Party」は一つのイベントで何通りもの楽しみ方がある。そこが、他のイベントにはない部分だと思います。
――余談ですが、本イベントのプレスリリースを拝見する中で、頭を悩ませた箇所がありました。SWAGらしい「遊び」がプレスリリースの時点から始まっていて、私たち書き手もストーリーに巻き込まれてしまった感覚でしょうか。また、本来は免責として記される「※これはフィクションです」という一文が、ここでは文字通りの意味を持っているのも、面白いなと思いました
志満津 そうですね。今、謎解き系のイベントでも、現実世界の中で本当に存在しているかのようにイベントを展開する手法が増えてきていると思います。この夏、他のエリアでも似たような形式のイベントがいくつかあると思います。
ただ、僕らの場合はそれだけではなく、全体を一つの体験として設計しているので、ジャンルとしては少し異なる立ち位置を目指しています。
――ありがとうございました




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