ピーオーピー設立50周年記念
特集『周年、どう活かす?』イベント業界各社の記念施策
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イベントのプロは、自社の周年をどう活かしたのか。
「祝う」だけで終わらせない各社の工夫から、
これからの周年施策のヒントを探る。
イベント企画や施設運営を手掛けるホットスケープは2026年、創立35周年を迎えた。1月にはRED° TOKYO TOWER(東京タワー)で、クライアントやパートナー企業を招いた記念パーティーを開き、自社でカフェ&イベントスペースを持つ新事業を発表した。カフェは今冬、飯野ビルディング(東京・千代田区)に「cafe E-SCAPE(カフェ・エスケープ)」としてオープン予定だ。カフェの運営はピーシーエムが担い、ホットスケープはイベント貸し出しとプロデュースを手掛ける。今回、周年パーティーの設計と新事業について、代表取締役の前野伸幸氏に聞いた。
ユニークベニュー起点の演出設計
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――記念パーティーのテーマである「宇宙」はどのように決まったのですか
前野 実は会場を決めたのが先でした。当社が普段カンファレンスホールで多くのイベントを手掛けていることは、来場される皆さんもご存じです。だから、あえてカンファレンスホールではなく、ユニークベニューを使いたいという思いがありました。映像や照明が使えることも条件でした。
RED° TOKYO TOWERで開くと決めてから、この場所にふさわしいテーマは何かと逆算し、未来を見据えるなら宇宙だと考えました。映像や照明機材はほとんど持ち込まず、会場に備え付けの機材をふんだんに活用しました。施設内の会場までの動線が長いことは一見弱みに思えますが、歩く床にロゴを映し出すなど、長い動線を逆手に取って、いろいろな仕掛けを施しました。



――周年の催しで意識されたことは
前野 誰を対象にするか、です。このような催しは、社員しか呼ばない場合もあれば、家族を呼ぶ場合もあります。当社は、クライアントや協力会社を含めたビジネスパートナーを招きました。家族向けなら、会社の雰囲気を分かってもらうことに重点を置きます。今回はビジネスパートナー向けなので、パーティーの中に散りばめたものが「自社のイベントでも使いたい」と思ってもらえるかどうかを意識しました。
テーマである「宇宙」は、オープニングでロケットが宇宙へ飛び出す映像や惑星の形をした丸いチョコレートのお土産、来場者用の光るIDパスなどで表現しました。演出で一番大事にしたのは、来てくれた人に楽しんでもらうこと。ケータリングやクラフトビール、パフォーマンス、DJ、ロゴ入りのミニバーガーも、すべてそうした狙いで用意しました。
抽選会にも少し工夫を凝らしました。景品を提供してくれた企業も、当たった人も、ステージに登壇してもらい紹介しました。抽選会を盛り上げるだけでなく、参加者同士が交流するきっかけにもしてもらいたかったのです。
――クラフトビールもオリジナルだそうですね
前野 入社して間もない社員たちに、自分たちのビールを考えてもらいました。ビールづくりをチームビルディングのメニューとして提供している会社があり、サポートしてもらいました。
ホットスケープらしさとは何か。自社らしさを考えること自体が、チームビルディングのテーマとして非常に良いと思います。出てきたキーワードから、フルーティーな味づくりに向く醸造所の提案を受け、完成しました。柚子を使い、塩を少し加えるといった特徴も、その過程で決まりました。
昼はカフェ、夜はイベント
――パーティーでは、カフェ&イベントスペースも発表されました。自社で店を持とうと考えた理由は
前野 飲食のシーンを伴うイベントが、今は多くなっています。フードテック関連のイベントもその一つです。地域創生でも、飲食を求められることが多くあります。酒や米、肉、フルーツなど、特産品の良さを伝えるには、実際に味わってもらうことが大事です。
ところが、イベント会場で試食を提供するのはハードルが高いのです。保健所の規制もありますが、それ以上に会場のルールで止められてしまうことがあります。すべてが自由にできる会場は当然ありません。試食をしてもらうなら、自分たちで店を持つ方が早いのではないかと長らく感じていました。自分たちの空間を持つと、できることはどんどん増えていきます。自分たちで汗をかいて運営し、経験を積むことも、会社としての大きな狙いです。
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――夜間や土日は主にイベントで貸し出す想定のようですね
前野 オフィスビルの中にカフェをつくると、夜はお客さんが入らず、閉めてしまう。土日は人が来ないので、閉めてしまう。そのような事情をよく耳にします。そこで、夕方からセミナーを開いたり、土日にイベントやショップを仕掛けたりすれば、空間を二毛作的に転用できます。ビルの設計や街づくりでは、コミュニティスペースやカフェをつくるのはセオリーです。しかし、それだけで本当に毎日賑わいを生み出せるかというと、そうではありません。我々のようなイベント会社による仕掛けが加わることで、助けになると考えています。
ただし、二毛作を成り立たせるには、事前の設計が欠かせません。当社が手掛ける「cafe E-SCAPE(カフェ・エスケープ)」は、窓際のカウンター席を除き、椅子とテーブルは動かせるので、フラットな空間をつくれます。柱の周りには展示棚を付けられ、普段は営業しながら、地域の産品を売ることもできます。映像は、外光にも負けない高輝度のLEDビジョン(約105インチ)を2画面並べます。照明は色を変更できますし、音響はアコースティックライブができるレベルです。店の入り口やレジカウンターの上はデジタルサイネージで、イベントごとに看板をつくる必要がありません。
カフェとして特徴的なのは焙煎機です。ガラス越しに見えるので、コーヒーにこだわっていることが十分に伝わると思います。厨房やバックヤードも、普通のカフェと比べてかなり充実していて、大型の冷蔵庫も備えています。
――どんな規模のイベントを想定していますか。飯野ビルディングとの連携も気になります
前野 セミナー形式なら、約40人です。来場者同士がコミュニケーションを取るには、ちょうど良い人数だと思います。コーヒーを飲みながら、かしこまらずに参加できる空間であることがポイントです。立食パーティー形式は、50〜70人程度を想定しています。
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連携先としては、隣接する屋外の「つながり広場」「さんかく広場」に加え、ビル内にイイノホールとイイノカンファレンスセンターがあります。例えば、屋外スペースに車を展示し、商談をカフェ側で行う。プレスセンターをカフェにつくる。VIPの控室をつくる。いろいろな連動の仕方があります。
――空間の色やこだわりは
前野 基本的には、イベントで使う空間なので「テーマを決めない」をテーマにしています。色を付けすぎると、かえって使いづらくなるので。ただし、日常はオフィスワーカーの利用が中心であるため、第三の居場所(サードプレイス)として使えることを意識しています。
コーヒーだけでなく、椅子にもこだわりました。座っていても疲れない、座り心地の良いものです。ただ、イベント時には片付ける必要があるので、スタッキングできる必要があります。重ねられて、収納時にコンパクトになる椅子を選ぶのにも苦労しました。電源は、窓際席や柱、ステージ周辺には十分ありますが、店の中央は移動式の椅子とテーブルなので電源を設けられません。そのため、モバイルバッテリーの貸し出しなどを検討しています。
――店名の「cafe E-SCAPE」に込めた意味は
前野 「SCAPE(風景、景観)」は社名のHOT SCAPEからの着想で、「エスケープ」には、日常から抜け出す、ストレスから離れるという意味を込めました。気分転換になる場所にしたいと思っています。
――最後に、このカフェは事業としてどう位置付けていますか
前野 当社にとって、cafe E-SCAPEは、大きな利益を生む空間であることより、試行錯誤の場であることのほうが重要です。社員にも「ここを活用して、仕事のきっかけをつくろう」と話しています。
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