かえつ有明中・高等学校(東京都江東区)はこのほど、従来の保健室・カウンセリング機能を再編した新拠点「ウェルネスセンター(NEST)」のプレス説明会を校内で開催した。司会から進行まで、ほぼすべてを生徒が担うという学校主催の説明会としてはユニークな構成だ。壇上では、校長や生徒プロジェクトメンバー、空間デザインを手がけた博展のクリエイティブコレクティブ「Studio コー」が、それぞれの立場から NEST の成り立ちと今後を語った。<掲載=EventBiz vol.44>
新拠点の魅力を生徒自ら説明

生徒有志メンバーである富永健介氏(NEST プロジェクトリーダー)は冒頭、「NEST が完成してからさまざまな活動を行ってきた。本日はその活動内容と、この場所がこれからどうあるべきかを話したい」と趣旨を説明。まず小島貴子校長から NEST 誕生の経緯が語られた。
社会心理系のキャリア発達を専門としてきた小島校長は「思春期に最も発達すべきは心と体」との考えから、保健室とカウンセリングルームという独立した機能を、学校全体で子どもの成長を支える一つのシンボリックな場所にできないかと考えた。きっかけは、対話によって回復を支える北欧発のアプローチ「オープンダイアローグ」を知ったことだった。これが教育現場に広がればという思いが NEST 構想へとつながった。
小島校長は、デザインの細部はあえて具体的に指示しなかったという。また拠点の名称は生徒の投票で決まったといい、「名前が “NEST” に決まったと聞いたとき、子どもたちが素敵なネーミングを考えられるんだと嬉しく思った(小島校長)」と生徒たちへの信頼をにじませた。学校はNEST を「いつでも戻り、翔ける巣」と位置付けている。
続いて、プロジェクトが始動してからの生徒たちの活動が紹介された。まず披露されたのは、メンバーが撮影・制作した写真集だ。撮影を担当した生徒は、NEST の機能と来訪者の目線の2つを意識して撮影に臨んだと話す。「空間の機能を分かりやすく伝えるだけなら動画の方が適切かもしれないが、あえて写真と文章という形にした。一瞬を切り取る写真の中に、この場所にどんな時間が流れているかを込めたかった」。
実際に NEST がどのように使われているか、生徒から現状が共有された。ある生徒は「以前の保健室のイメージがガラッと変わり、気軽に入れる場所になった」と友人の感想を紹介。人に聞かれたくない話ができる空間と、気軽に立ち寄れる空間とがうまく分かれているという。別の生徒は、休み時間に NEST で過ごしていたところ、それまで関わりのなかった先輩から話しかけられた経験を紹介し、「異学年交流のきっかけになっている」と話した。
イベント終盤には、生徒たちが NEST の中央スペースに座り、今後の活用アイデアを語り合う一幕もあった。PC やスマートフォン疲れに対応するコーナーやプラネタリウムの設置案も挙がり、NEST がまだ完成した場所ではなく、生徒自身の手で更新され続けている場所であることがうかがえた。


空間デザインの考え方
空間デザインを担当したStudio コーの中里洋介氏が登壇し、設計の背景を説明した。
同社が重視したのは、気軽に入れる空間であることだ。中央に木製の「島」を配置し、緩やかな傾斜をつけることで、手前は誰でも気軽に座れる「Open」エリア、中央付近は対話を重ねる「Middle」エリア、奥は静かに気持ちを整える「Semi-closed」エリアという3段階の心理的距離を生み出したと説明。エリアごとに、フランクに話せる場所、しっかり向き合って話す場所、人目を避けて密かに話す場所と、会話の質も変わってくるという。設計にあたっては「保健室・カウンセリングルーム」と言われて連想されるイメージからどう脱却するかを意識した。
もう一つ特徴的なのが「島」に使われている木材だ。複数の樹種が手前から奥に向かってグラデーション状に配置されており、着色剤を使わず木材本来の色合いでその変化を表現している。「多様な声を拾う場所になってほしい」との思いから、多様な樹種を採用したという。
素材そのものの選定にも意図が込められている。木材は学校が立地する地域性を踏まえ、木材の集積地である新木場エリアから調達された。中里氏は「木材がどこから来たのか、どんな場所なのかを知ることが、地域の学びにもつながれば」と説明した。
.png)