ピーオーピー設立50周年記念
特集『周年、どう活かす?』イベント業界各社の記念施策
–
イベントのプロは、自社の周年をどう活かしたのか。
「祝う」だけで終わらせない各社の工夫から、
これからの周年施策のヒントを探る。
シンユニティグループのタケナカが創立100周年の記念施策に選んだのは、架空のエナジードリンクブランドの発売記念イベントだった。7月22日から38日間開かれた「Ehtel -“Release” Party- Produced by SWAG」の制作・演出を担ったのは、同グループでコンテンツ制作を手掛けるSWAGだ。ブランドも企業もゼロから作り、来場者の一部が気付く裏のストーリーを仕込んだ。周年の祝い方として、タケナカの名を前面に出さず、架空の企業を主催に据え、世界観を最後まで作り込んだ。その思い切りが本イベントの面白さだ。タケナカ専務取締役で、イベントのエグゼクティブプロデューサーを務めた長崎英樹氏に、設計の意図と今後の広がりについて聞いた。
タケナカ_長崎氏-edited-786x1024.webp)
周年を来場者と出会う場に
広角-1024x411.webp)
会場は渋谷ストリームホール(東京都渋谷区)の4階から6階。4階は、飲むと記憶が曖昧になる設定のエナジードリンク「Ehtel(エテル)」のポップアップストアで、試飲や購入ができた。5・6階は体験型のメディアアートが続く有料エリアで、入場チケットを買うとエテルが1本もらえた。
会場内の造作やコンテンツも含め、グループの総力を結集した空間である。中でも、映像や音響、照明の機材を多く保有するタケナカは、その強みをふんだんに生かした。仮に同じ内容を外部に発注してそろえるなら、優に億を超える規模になる。式典や記念誌といった施策とは異なり、周年の予算を来場者と直接出会う場に投じた。
気付けばさらに楽しめる
ポップアップストアの先に進むと、メディアアートが連なる空間に入る。その裏には重いストーリーが仕込まれていた。しかし運営側は、裏のストーリーがあることを明示しない。明示すれば、来場者は手掛かりを探して歩き回るからだ。
設計の前提は、10人中9人が純粋にメディアアートとして楽しんで帰り、手掛かりに気付いた1人が、さらに深く楽しめばよい、というものだった。気付いた来場者が再訪したり、「何を隠していたのか」と話題になったりすることも狙いに入れていた。気付く人も気付かない人も楽しめる、二層の構成がイベントの魅力だ。
会場内で、事前に用意した手掛かりは2点。一つは、4階に並ぶモニターで、映像が乱れる演出だ。プロの映像にしては不自然な乱れで、何かがおかしいという空気を伝える。もう一つは、1本8,900円というエテルの割高すぎる価格である。4階に少し滞在すれば、違和感に気付ける。
_EHT0144-1024x682.webp)
体験後、SNSには「面白かったが内容を忘れた」との投稿が相次いだ。エテルの設定を踏まえた書き込みが多く、核心に触れない投稿が並んだ結果、ネタバレは広がらなかった。長崎氏は、仕掛けを読み解くのを好む層のマナーの良さを挙げる。「これを言ったら身も蓋もない、と皆が分かっている」。
客層は一つではなかった。長崎氏によると、メディアアートを好む層と仕掛けを読み解くのを好む層は別で、重なりは小さかったように見えたという。前者にはストーリーを仕込んだ展示が、後者には大量の映像を使った派手な演出が、それぞれ新鮮に映った。仕掛けを読み解くタイプのイベントは、映像やデジタル演出に費用をかけず、物語づくりに力を注ぐのが通例だ。フィクションを扱うイベントは他にもあるが、メディアアートと組み合わせた企画は、国内ではほとんど例がない。
_EHT0799-4-1024x683.jpg)
_HIB0292-1024x683.jpg)
架空の企業を主催に立てる
主催として立てたのは、架空の企業「UKAB Lab.(ウカブラボ)」だ。エテルを発売した同社の依頼で、SWAGがイベントをプロデュースする設定になっている。タケナカの名義で、周年記念として打ち出す選択肢もあった。だが、B to Bを得意としてきたタケナカにとって、B to Cイベントの主催は初めてだった。今回は社名ではなく、世界観そのものを来場者に届けることを選んだ。
イベントを楽しみに来る人は、設定の細部まで追い、疑問があれば運営に尋ねる。近年話題になるイベントは、そうした熱心な来場者に応えるように、設定を徹底的に作り込むものが多い。長崎氏は「本格的にイベントをやるなら、そこまでやらないと中途半端になる」と話す。グッズ展開にも同じ姿勢が表れていた。キャラクターである「UKA(ウカ)」がデザインされたステッカーやピンバッジ、ポストカード、Tシャツ、靴下、キャップ、ぬいぐるみポーチ、クッションなど、品揃えは多岐にわたった。メディアアートの演出上、ウカは控えめな扱いだったが、それでもキャラクターを気に入る来場者はいた。
_EHT0136-1024x682.webp)
会期後も世界観を広げる
会期中の来場者アンケートやSNSでは好意的な反応が大半を占め、面白いことを思い切ってやる会社としての印象を強く残した。その余韻を会期後も届ける展開が用意されている。一つは、場内のさまざまなエリアで流れたBGMの配信で、準備が進んでいる。もう一つは、写真でイベントを振り返る「Ehtel GALLERY(仮)」だ。来場者が会場で撮影したお気に入りの写真を募り、公式写真とともに掲載する予定だ。いずれも、会期中に生まれた来場者とのつながりを、その後も保つ取り組みといえる。
タケナカは100年の節目に、これまで直接の接点が少なかった人々に向けてイベントを開催した。今回の試みが次にどうつながるのか、楽しみにしたい。













.png)